今宵も

はね吉 がらすの森 ～祭だ祭だ！～

…に、お越しくださいまして、ありがとうございます！



お祭りの季節ですね～！
生まれ育った地域には有名な祭などなかったのですが、
結婚してから
屋台が街じゅうを練り歩くような…
1年が祭中心で決まっているような…
祭の時だけ剃り込みで眉毛の無いじいちゃんが締め込みに法被地下足袋で威勢よく歩いてるような…
そんな街に暮らしております。
なかなかドキドキします。

このお話のマヤたんもドキドキしていますが、
ちょっと意味が違うところにあるようです。



それでは続きから、ドゾ！

　　　　　　　 Like a cotton candy




　　　 　　　　　　　　　 2



「た、・・・・の、・し、・み、・・・・で、・・す、・・！送信！」

ほぉ、と息を吐き出してパタンと携帯を閉じる。
速水真澄から、公演の無い休日に誘われたのは初めてだった。
回転寿司に連れていってもらってから何度か公演後に食事に行ったが、
そんな「遊びに」行くことは無かった。

真澄からの「縁日にいってみないか？」の誘いを小さな画面の中に見たとき、
マヤは心臓が一瞬速く打ち始めたのに気がついた。
まだ「仲の良いともだち」のレベルでしかない、と真澄にも自分にも釘を刺し続けているのに。

「はぁ･･･これってまさしくデートそのもの、じゃない…！」

真澄と会うとき、真澄はいつでもさりげなく自分の好意を伝えて来る。
さりげなさすぎて気がつかない時もあるが、
そんなときはいつも頭をがしがし、くしゃ、とされて気がつく。
「うもぉ、だからそんなに気安く触んないでくださいってば！！」と怒るのだが、
照れくさくてちょっと嬉しい気分なのは
そんな真澄の言動に自分の心も巻きとられ始めているのかもしれない…と思う。

「あたしって単純…なのかなぁ…」

親の仇にこんな感情、持っちゃったりして。
「好き」ってんじゃないけど、誘われて嬉しいなんて…
それを相手に伝えちゃってるなんて。

「んもー、わかんない！」
マヤは携帯電話を枕元において、ばふっと布団をかぶった。



あの日…



自分の吹いた吹き戻しの笛を、取り上げて吹き始めた真澄。
あの時の真澄は、今に比べると本心を見せなくて、冷静で、そして淋しげだった。

今なら「もうっ！何してんですか！」って取り上げて笑いあっているだろう。

あの日は。
自分の唇に触れたものを口にした…いわゆる「間接キス」にショックを受けた。
嫌悪感は感じなかったけれど、
あえてそんな事をわざわざする天敵のたくらみがわからず
とても動揺したのを覚えている。

あの後、真澄は親の勧める見合いをしたのだった。
自分に何か言いたげで苦しそうで。
最後、酷い言葉をあびて諦めたような痛い笑顔を向けたあの後に。

あの頃すでに自分のことを好きだったのなら…？
何かを言い出しかねていた、あの表情を思い出すと自分まで苦しくなるようだった。

今知っている真澄の優しい笑顔やまなざしと
あの頃の真澄の辛そうな冷たい顔を交互に思い出す。
大嫌いな頃の真澄を思い出す度に、小さく自分の心が痛む。
きゅう、と泣くかのように。

相手を想うとき、幸せな気持ちになるだけが恋なのだと思っていた。
相手を想うと心が泣くときにこそ、愛が芽生え始めているということを
マヤはまだ、知らなかった。




まだ、好きとかじゃないんだ…
絶対、好き、っていうわけじゃないんだから…


それが無理なあがきだということにマヤが気付くのも、もっと後の事になる。






つづく！







あああ、短くってゴメンなさい！




いよいよ、楽しいデートですよシャチョー！



それでは今宵はこの辺で。


明日もいい日でありますように～♪

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