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Like a cotton candy 4
2013-11-08 Fri 10:01
今宵も

はね吉 がらすの森 ~秋深し?~

…に、お越しくださいまして、ありがとうございます!



あっという間に終わってしまいそうな、短い秋になりそうですね。
秋のお楽しみって何でしょうかね?
やっぱり美味しいもの、なのかな。

カボチャは皮の部分が大好きです。
神ウマだと思います!

どうでもいいよ!







それでは続きから、ドゾー♪

Like a cotton candy



4



ちょうど1年前…くらいになるのだろうか。
自分にとって、最初で最後の甘くて苦いデートの思い出にするつもりだった。
想い人はニコリともしなかったけれど、
並んで歩き、嬉しそうにケーキを頬張り、プラネタリウムに感動している顔を見ているだけで
一生の大切な思い出ができたと思った。
これで諦められる…と思った…。

こうして今また、並んで歩いている。
想い人は自分の気持ちをわかってくれている。
つれないかと思えば、時々甘えたような言い方をすることもあって
そのたびに心がふわ、と躍る。
自分では表面的には冷静を保っているつもりだが、ちょうど1年前に比べたら明らかに舞い上がっている。

まさか自分から射的やスーパーボールすくいをしようなんて。
しかもスーツ姿で。
大都の社員が見たら何て思うだろうか?

スーパーボールすくいはマヤと対戦して、
あの子は意外にも得意だったらしくて121対153で
……負けてしまった。
まさかだ。

でも悔しくない。かえって嬉しい。たのしい。



自分に、そんな楽しい時間が過ごせることがあろうとは考えもしなかった。
統べてはマヤのおかげだ。
そして自分に素直に、マヤに素直に気持ちを伝えられたおかげなんだろう。


いつまでも、こんな時間が過ごせたらいい…


「もう、速水さん、あたしの話聞いてなかったでしょう!」
「ん?や、ごめん、なんだ?」

「ほら、あれ、すごいと思いませんか?なんか魔法みたい…!」

マヤが指差す先には、他の露店とは異彩を放っている綿菓子屋があった。
露店、と言ってはばかるくらいの…
小さな老女が、綿菓子製造機を目の前に抱えるように座って、
後にパラソルを出して何種類かの綿菓子の写真を展示しているだけ、のような店構えだ。

まるで田舎の囲炉裏端で
餅やら干し芋なんかを炙っておやつを作るような雰囲気で
黙々淡々と綿菓子を作っている。

マヤは店主の手元を見つめて、そこから離れられなくなった。
「ね、すごく素敵でしょう…?」

店主はザラメ糖に色をつけたものを機械に入れては、違う色合いの綿を棒に巻き付けていく。
生まれてすぐの綿雲は何を躊躇する間も無く巻き取られ、老女の心のままに形作られてゆく。
回転させる棒の角度をかえていくと
甘い綿雲はいつしかブーケのような形になっていった。
その夢のような景色に、自分も虜にさせられていくようだった。

「マヤ、欲しいんだろ?」
「ううん…もう、いっぱい買ってもらいましたから。ただ作るところをゆっくり見たいだけなの」

マヤの瞳は出来上がっていく綿のブーケに釘付けになって、
魔法にかかって魂を操られる少女のような表情になっている。
老女がこちらにむかって、無言で「買うの?買わないの?」の顔をしたので
指を一本立てて目で合図をした。

老女は無言でザラメ糖を機械に入れ、芯になる玉を巻いた。
その後すみれ色のザラメを入れ、開いた花びらのように巻き付け、五弁の花びらになるように芯に押さえつける。
次にすみれ色と紅色のザラメを混ぜて入れ、同じようにした。
それはまるで、紫のバラのように出来上がった。

「はい、800円」老女はマヤではなく、自分に綿菓子の花を持たせた。

マヤはびっくりして自分を見つめている。迷わずマヤに手渡す。
その紫のバラを、じっと見つめて…息を潜めている。

「どうして…紫のバラ…?」

「ああ、お嬢さん、気に入らなかったかい?」老女が初めて声をかけてきた。
「いえ…とても素敵です…」

「このお兄さんのイメージで作ったからね、あたしが見た感じだから」
「速水さんのイメージ…ですか…」

外人みたいな「やれやれまいっちゃたね」のゼスチャーをしながら、
実はスーツの中は冷や汗でびっしょりだった。
マヤはフクザツな表情で、上目遣いに見てくる。

「し、仕方ないだろ…あのおばさんがそう思ったってことだから。
 それに、紫だがバラではないのかもしれない」
……我ながら苦しい言い訳だと思う。不自然極まりない。

「そうですね。速水さんのイメージカラーが紫っぽい、ってことはあたしも思ってはいましたから」
マヤはさっそく花びらの一枚を剥がしてパク、と食べる。
そうしてもう一枚剥がして、自分の口元に差し出す。
こんなことがもう自然に出来る間柄になっている…と感激しながら噛り付く。
じゅわ、と甘い刺激が走る。

「そう言いながら、やっぱり不満なんだろ?紫のばらのひと以外からこれを貰うのは」
「むーーーーーーん、不満じゃないです。素直に嬉しいです。綺麗だし美味しいし」
「でも納得してないんだな。そんな顔をしている」

あぁ。なんだか自虐スイッチが入ってしまったようだ。

「自分でも…わからないんです…速水さんのイメージが紫のばらってことが
 まさかそんな!って気持ちと、
 そうかもな、ちょっと嬉しいな、って気持ちとがぐるぐるしてて」


しばらく、お互いに無言のまま歩く。
マヤは自分と交互に綿の花びらをはがしては口元に差し出してくる。
口の中は甘いのだが、ほんの少しほろ苦く感じるのはなんだろう。

はたして自分は…正体がマヤにばれてもいい、と思っているのか?
マヤのなかに、自分の事が好きだと思う気持ちが芽生えるまでは
ばれないで欲しいと思っているのか?

そして。

いま、マヤは本当のところ…自分をどう思っているのか…?


「あの日…速水さん、何を言いたかったの?」
「えっ」
「『今日君を誘い出したわけは…』その、あと」
「ああ」
「月影先生がいなくなったって電話がはいって、結局聞けなかったんです」

「何を…したかったんですか」




マヤが真剣にまっすぐに見つめてくる。
小さくなった紫のバラの綿菓子を胸に持ちながら。
今真剣に告白しないでどうするんだ。

「あの日も…今夜も、同じだ」

「君に、おれの本当の気持ちを伝えたい、と思っていた」

「君は信じないかもしれないが」

「おれは…ずっと昔から…君のことが好きだった」

マヤは頬を染めて、視線を下に落とした。

「あの日は、君に受け止めてもらえないのが明白だったから言えなかった」

「今は…どうなのかな。受け止めてもらえるのかな」

「こうしていっしょに食事をしたり縁日で遊んだり出来る分、心は傍にいるようには思うんだが」

真正面を向いていたマヤは、視線を下に落としたまま身体ごと横をむいた。

「今だって…そんな簡単に受け止められるもんじゃありません…」
「嬉しいですけど…いろいろ…、いろいろあったから、……」

「わかってる」




気まずくなったわけではない。はじめからわかっていることだ。
それを承知で、こうして時間と思い出を重ねているのだから。


「「待って…」」 二人の声が重なった。


「ふふ。お先にドウゾ」
「スミマセン…  …待っていてくれますか?」

「ああ。待っていていいか」


マヤの中にある、「縛り」ごと大事にしたい。
自分を受け入れられない理由は、あまりにも過酷だからだ。
それごと、自分はマヤを一生見守る、と決めたのだから。


最後の紫の花びらをちぎって、口元に差し出された。
口に入れた瞬間に溶けて消えてしまい、強い甘さは実は実体が無い。

「ありがとうございました。紫のばら」
「…え…?」

「やだ、これですよ」マヤは悪戯っぽく笑う。

「紫のばらのひとって…どんな人なんだろう。歳は何歳くらいなんだろう…
 ひょっとしたら速水さんによく似ていたりするのかなぁ」
「会いたいな…いつになったら、会えるんだろう…」
「紫のばらのひとから、花束を手渡しでもらえるように…頑張らなくちゃ、あたし」

あざやかにかわされてしまったような気がする…

「ね、焼きそば食べません?口の中甘あまになっちゃったし」
何も無かったかのようにキラキラと笑っているマヤ。
これだから、自分の恋心は常に新しく生まれては巻き取られていってしまう。

「で、そのあとはりんご飴じゃないのか?あんまり食いすぎると腹壊すぞ」

「べぇ~、だ」

「でもあたしやっぱり、」

くるりとふりかえって、これ以上ない笑顔で首をかしげる君…


「綿菓子が一番好きかも、って今思いました!」












おしまい。








いかがでしたでしょうか…?


ほろ苦あま、っていいな。
秋の雰囲気に合いますねぇ。ちょっと焦げた焼き芋とか。(そっちか)




それでは今宵はこの辺で。

明日もいい日でありますように。
…風邪ひかないように気をつけて下さいね♪
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この記事のコメント
お久しぶりです!
ガラスの仮面創作、まだまだ皆様がんばっていらっしゃいますね!よくエネルギーが切れないなあ、と感心。私は飽き症なもので、去年アベンジャーズ!って言ってたのがパシフィックリムなる映画にはまってしまいまして・・・。
男女ペアのパイロットが、心を一つにして(心身ともにシンクロさせて)巨大ロボで戦う!
いいでしょ、このシンクロって設定。
でも、過去の浮気とか自分の恥ずかしい記憶とか黒歴史が相手にばっちりわかっちゃう。
マヤと真澄様だったら笑えるよね~
なんて映画見ながら考えちゃいました。
ところで・・・50巻どうなったのかしら?
2013-12-06 Fri 16:42 | URL | neko #-[ 内容変更]
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