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Once in a Blue moon
2012-06-28 Thu 11:04
今宵も

   はね吉 がらすの森 ~見切り発車…~


    …に、お越しくださいましてありがとうございます!




 HKD48手も、あと3分の1を残すところとなりました…

始めは○題噺でのお話に使わせていただいていましたが
残っているお題は「題名」で使えるかな?というものが多いのです。

なんとなくこんなイメージかな~と方向は見えているのですが
「起」「承」の切り口が見えてこなくて迷走中…。
そんな題材がころころ、ぽこぽこ。

そうもいってられないので、見切り発車かな~とか
なんてチャレンジャーな…

いやいや、結構そんなのばっかりなんです、ワシ…


HKD48手より、

5.煙草と雨とそれからきみと
14.Once in a Blue moon

から参ります^^



続きからドゾ!!











   ♪こちらを再生してからお読みいただけるといいかも、と。







           Once in a Blue moon




 突然に降りだして来た雨は、通りを歩く人々を軒下に追いやった。
舗道を白く煙らせて小さな小波を起こして。

都会の雨は最近、亜熱帯のような激しさを持ち始めた。
地下駐車場に向かう坂道の軒に身を寄せたマヤは
ハンドタオルで髪の雫を拭ってタメ息をつく。

ついてないなぁ…

駅まではまだ大通りを2つほど抜けなければいけない。
稽古で疲れた身体をビルの壁にもたれかける。
周りには誰もいない。
傘を持つものはそれぞれに先を急ぐ。
うっかり者の自分はこうしておいてけぼり、だ。
ハンドタオルをひろげて頭に乗せ、走り出そうとした瞬間、後ろから声がかかった。

「きみは河童か何かか」

ドキーーーン!としてふり返ると、そこには秘かに想っている速水真澄の姿があった。

「はっ、はっ、速水さん!」

「奇遇だな。こんなところできみに会うなんて思いもしなかった」
「速水さんこそ、なんでこんなトコにいるんですか!」
「おれはこのビルに用があったの。何の不思議も無いが?」
「……」
「傘、持ってないのか」
「うっかりしてて、忘れました」

真澄はケースから煙草を1本出し、マヤに目だけで「いいか?」ときいた。
優しい瞳。
マヤはドキドキしながらコクン、と頷いた。

深く紫煙を吸い込んでマヤからいちばん遠いところに吐き出しながら
真澄はクスクスと笑っていた。

「いつまで乗せてるんだ、その河童の皿」
「カッ、カッ、河童じゃないですっ!!」
マヤは真っ赤になって頭の上のタオルを取った。
「じゃ、プチトマトのヘタ、だ」
「もぉぉぉっ、次から次にそんな言い方してっ!イジワルッ!」
マヤは並ぶ真澄の腕に、軽く拳をぶつけた。
叶わぬ片想いの男性との、そんな小さな接触が心を弾ませる。

「なんだか、きみと会うときには雨が多いと思わないか?」
「…そうでしょうか?」

「ジーナと5つの青い壷の時…結構昔だな」
「そんなこと速水さん憶えてるんですか」
「ん?…あぁ」
「あと…家出娘をブランコから引っぺがして帰ったこともあった」
「イチゴの傘で相合傘、もあったぞ。…あれは雪だったけどな」

マヤは真澄が次々にエピソードを出してくることに驚いていた。
なぜそんなに憶えているの…?
紫のバラのひとだから?保護者だから?
『あたしのこと、好き…だから?』そんなことさえ期待させるような。

「あと…梅の谷…」
マヤは呟くように言った。大切な恋の思い出だ。
お互いを恋ゆる想いがあるのに気付かぬまま
辛くて甘い思い出の夜を同時にかみしめた。
あまりに生々しい思い出に、軽く口にすることができない。

雨の音だけが響いた。

最初に沈黙を破ったのは真澄のほうだった。
「今でもイチゴの傘は使ってるのか?」
「はい。お気に入りですから」
「今日見れなくて残念だったな」
「持ってたら速水さんとこんなとこで会っていません」
「ははは、それもそうだ」

「おれの中では、雪、とくれば『イチゴの傘』を思い出すな」
「へ…へぇ…」
「速水真澄としては、かなりのインパクト、だったらしい」
「……」

「今日は煙草と雨と…それからきみとその3点セットで憶えてるのかもな」


『イチゴの傘と雪とそれからあたし』も3点セットだったんだ…
胸が熱くなった。ドキドキする。
なにか…なにか言わなきゃ。

「じゃ…『煙草と雨とそれから速水さん』ってあたしも憶えてるのかもしれないですね」

真澄は少し驚いた目をしてマヤを見た。
まじまじと見つめている。
「な…なに?」

「光栄だな」優しい笑顔だった。
思わず赤面してしまう。

「あ、あと、『奇遇だな』とからかいと、速水さんの爆笑…」
「なんだそれ」
「いっつもいっつも、会った時にはもれなくついてきます!!」

真澄は爆笑した。
煙草の煙が引っ掛かって咳き込んで、身体を折り曲げて。

「だからっ、ほらっ、笑い過ぎですってばっっっ!!!!」
マヤは真澄の背中をバシバシと叩いた。
「ははは、ごほ、はは、ごほ、ごほ、ああ、ありがとう…」
真澄の目尻に涙さえ光っている。

煙草の火を消して指に挟みながら、ようやく息も整ってきた。

「知ってるか?」
「はい?」

Once in a Blue moon

「?」

「極めて稀なこと。決してありえないこと」

「…はぁ…」

「おれは会社では、こんなに笑うことなんて有り得ないそうだ」
「え~、そうなんですかぁ?」
「そう、それをどうやらきみ一人が独占しているらしい」

雨音が、だんだんと緩やかになってくる。
マヤは真澄の言葉を胸の内で反芻した。
照れ臭くなって慌てて軽口の応戦をしようとしたが、上手い言葉が出てこない。

「それって喜んでいいんですかね?」

「はははは、いいんじゃないか?」
「あたしは有難みは感じないですけど!」
「ふはは、そりゃそうかもな」

「そうだな…きみ自身も、稀有な存在そのもの、だからな」
「なんかまた豆ダヌキの化身とか言うつもりでしょっ!!!!」
「また、きみは、おれを…そんなに笑わせるのかっっ …!!!」

ひとしきり笑ってから、静かに言った。

「おれをこんなに楽しませて、笑わせて、くつろいだ気持ちにさせる稀有な存在だ。
 あと、演劇の才能と。」

雨が小降りになってきた。

「さぁ、そろそろ雨も小降りになって来た。どこまで行くんだ?」
「そこの地下鉄の駅までです」
「じゃ、これ、持って行きなさい」

真澄は後ろに立てかけてあった紳士ものの傘を出してきた。

「あっ…」

「イチゴじゃなきゃイヤ、なんて言うなよ」
「あ、アリガトゴザイマス…」
「稽古、がんばれよ。じゃ、また」

そう言って、またビルの中に消えていった。




「 Once in a Blue moon……」

マヤの胸の中に、切なくて甘い気持ちがひろがった。
秘めていなければならない想いなのに。
こうしてますます忘れさせなくするなんて…。

温かくて、残酷な優しさ。
でも、あんなふうに言われて、舞い上がるほど嬉しかった。

「ありがとう…紫のバラのひと…速水さん…」

大きな傘を広げて歩き出す。降って来る雨をよけて守ってくれる、大きな傘。

嬉しいのか切なくて辛いのか、わからない涙が頬に零れる。

誰にも見られないように、隠しながら、歩いた……







              おしまい。







キュン、ってキテいただけたら、大成功!!




  それでは今宵はこのへんで。
  明日もいい日でありますように♪



追伸:○大好き!○○より!様。
    …こうゆうこと、なんですよね?うふふ♪






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<<いっぱいいただきました^^ | はね吉 がらすの森 R-18 | ああ、いいかげんにしなさい…><>>
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-06-28 Thu 15:29 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-06-29 Fri 01:30 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-06-29 Fri 04:40 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-06-29 Fri 09:56 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-06-29 Fri 14:00 | | #[ 内容変更]
Re: あぁ胸キュン!
○月様、はじめまして!
コメントありがとうございます^^
もう、読み逃げとおっしゃいますな!お越しいただけていたのはほんとありがたいです!
真澄萌え、ワシも同じ、ですよ~~
真澄萌えの定義…「どんな状態の真澄にも萌えることが出来る」なのですよね♪
今回は「こんなにマヤたんに想われているのに気がつかないで一人で片想いだと思い込んでいる」真澄、
に萌える…ふふふふ。
どんなにイジっても柔軟に受け止めてくれる(…のか?)真澄さん、サイコーです^^
ご期待に応えられるように…ガンバリマス、うふふ^^

またよろしくお願いします☆☆

2012-06-30 Sat 23:20 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
Re: お久しぶりです!
こんばんわ~~~ありがとうございます^^
「Once in a Blue moon」をぐぐって、その結果、
「あー!『たかし』だったんだぁ!!」ってわかったんですよ~^^
で、ずっとご贔屓にしてくださっていた御礼もこめて、曲もくっつけてしまった、という…
本当に、いつもありがとうございます!!
キュンしていただいて、よかったです♪
どうぞご自愛くださいね~~☆

2012-06-30 Sat 23:30 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
Re: ほろり。
そうか~~試練は持ち越し、となったのですか~~
ストレスを吹き飛ばす何かが欲しいとこ、ですな~~><
ほんとお見舞い申し上げます、です><

>偉そうに詰問した挙句、一大宣言してヘタヘタ座り込んじゃう真澄に縋られちゃうんだぜ(笑)
いいね~~これ、楽しそうだわ~~
冷血漢の仮面をかぶってる真澄ちゃんを追い詰める…のは、ド天然か逆におそろしく頭の切れる人間か
どちらかだと思うのですが・・・
ジュリエット、を見たマヤたんみたく腰が抜けてしまう状態…の真澄ちゃん…に縋られたいですな^^
どん、と支えてやるぜ?
そうそう、完全にマヤたん赤面といえば、で刷り込まれております^^
申し訳ないが…。
リスペクト、の結果でゴザイマス。ゆるしてっ!! は…う…
2012-06-30 Sat 23:44 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
Re: きゅん!
ありがとうございま~~~す!
「水城さんに10分もらう」裏話バージョン、カワイイ!ですね^^
シャチョーがウルウルしたチワワアイズのように見つめたら、
姐さんはダメな弟を甘やかしてしまうのでしょうな^^
きゅん、としましたよ!うふふ^^

あー、嵐が丘のときに、コージが傘を託して帰ったエピ、を思い出してしまった…!
そのときもマヤたん、「今でも優しい…」って泣いてたな…
ううう。かぶった><

ありがとございました!
またお待ちしてますね♪♪

2012-06-30 Sat 23:51 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
わー、「はじまりはいつも雨」も大好きですよ~~!!
上書きしなくてもいいですよぅ!
ビフォーアフターの匠風キャッチフレーズ、ウケました!
そんないいもんやないですけど、お褒めいただいてくすぐったいやら照れるやら。

どうぞどうぞ、イチャイチャ前の胸キュンキュンな場面、お願いしますよっ!!
いくつでもどんなバージョンでもイッパイ書いて欲しい!!
期待しております~~!!

ありがとうございましたぁ!!


2012-06-30 Sat 23:58 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-07-01 Sun 19:53 | | #[ 内容変更]
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