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Water  2
2011-05-05 Thu 02:01
Waterの第2話です。


真夜中の速水邸は、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。

子どもの頃から従順で冷静な若い主が、
ぐしょ濡れの捨て猫のような、青白い女子高生をかついで帰ったからだ。
思春期にもガールフレンドの存在を匂わすことなく、
あらゆる楽しみから自分を遠ざけているような青年が。

明らかに、いつもの真澄の様子ではなかった。
一刻を争うかのように客間に女の子を運び、医師の往診を頼み(午前3時だというのに!!)
濡れた髪を拭いたりし始める。
濡れた服を脱がそうと、胸元のボタンを外すと
急にスク、と立ち上がって「着替えさせてやってくれ。俺も着替えてくる」と部屋を出た。

医師の診断を終え、ようやく静けさが戻ってきた。
メイドも執事も部屋に帰った。





マヤが、眠っている。
さっきまで、冷たく青白い人形のようだったが
今は高熱を出し、グッタリとベットに沈んでいる。

良かれと思ってすすめた仕事だった。
世間の注目を集めるためなら、母娘の情については二の次だった。
確かに胸が痛んだが、まさかこんな事態を引き起こし
大切なこの子をここまで傷つけることになるとは。

何もかも、マヤから奪い去ってしまったのは、俺か。
俺のせいで、お前は生き甲斐を失ってしまうのか。

お前が生きてゆけないのなら、俺の命をわけてやる。
どうか虹の世界で輝く瞳を取り戻して欲しい。
俺のすべてを懸けてもいい。

額に汗が浮かんでいる。
苦しそうに吐く息が熱い。
痩せっぽちの子どもが、気付けばばら色の頬を持つ乙女に育っていた。
淡い胸元のふくらみが、血の気もなく青かった。
お前がこんなに苦しんでいるのに、
俺の胸の底には口に出来ないような想いが潜んでいた。
冷え切った身体を温めてやるのだ、と言い訳をして
同衾してしまうような妄想が俺を襲う。

・・・何を、考えているんだ、速水真澄・・・!

まだまだ子どものお前を、いつまで俺は待つのだろう。
こんなに憎まれているのに、待っていればいつか、なんて
答えが出ない迷路の中に佇んでいる。

ひとつ確かなことは、
俺は、この11歳下の少女に恋をしている。
はっきりと認めると、覚悟が出来た。
俺はマヤを愛する。
どんなに憎まれても嫌われても、マヤの本当の輝きを取り戻させる。
マヤを、愛する。


医師の置いていった水薬のフタを取る。
こんなことをすれば、マヤがそれに気付けば、大騒ぎをするのだろう…

薬を自分の口に含み、マヤの口を開く。
昏々と眠るマヤ。どうか気付かないでくれ。

そっとくちづけ、自分に含んでいる液体をゆっくりとマヤに注ぐ。
急ぎすぎて、溢れないように注意しながら。
喉元がコクンと動き、マヤが飲み込んだのを確認した。
規定の量まで何度も、時間をかけて口移しに飲ませた。
どうか、俺の想いまで飲み込んで欲しい。

・・・残念なことに、薬の処方は守らなければならない。
俺にとって初めての、心騒ぐ瞬間だった。
小さなため息を吐いて、おれはベットから離れようとした。
その瞬間、眠っているはずのマヤが声をだした。




「・・・・・・も・・・。」




人生でこれほど驚いたことはなく…
シーツに埋まった膝がからまり、ベッドから落ちかけた。






            つづく。



きゃー。
妄想マスミン。
きゃー!!





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2011-05-06 Fri 06:40 | | #[ 内容変更]
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