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ささやかな贈り物 3
2011-07-05 Tue 02:41
この作品を書いた当初と、少し変えてみます。
マヤたんの独白のみ、のエンディングだったのですが
どっちかというと…
シャチョーが部屋に上がりこんでからのことが気になるでしょ?!でしょ?!

内容は変わりませんが、ちょっと膨らみをもたせて書き直します。


それではどうぞ。





            ささやかな贈り物  3






速水さんがこの部屋にくるのは、これで2度目になるんだろうか。
あの頃はまだ、月影先生も一緒に暮らしていて。
そうそう、倒れた先生を介抱してくれたんだった…あれからもう、随分経つんだな…

「どうぞ。散らかってますけど」
「突然で申し訳ない、って無理矢理誘われて言うのもなんだかな」
「相変わらず、何もない部屋だな」
「狭い部屋で二人暮らしですから。ってか、速水さんでか過ぎ。ますます部屋が狭く感じる」
「部屋が狭いのはおれのせいじゃない」
「あっあっあっ、帰らないで下さいごめんなさい言い過ぎましたここにいて下さいお茶入れますから座って下さい」
「…まったく」

速水さんはスーツの上着を脱いでコタツの一辺にドッカリと座った。
そして、くっくっくっくっと肩を揺らして笑っている。

花柄のコタツ布団から生えているハヤミマスミは、あたしの部屋に在る物としては完全に異物だ。
レンゲ畑に白いバラが一輪咲いてるような…あれ、ちがうかな。
○本新喜劇の中に○カラジェンヌがいるみたいな…あ、そうそう、それに近いかも。
「あ~~~~あぁ、ちーん!」ってされてる速水さんを思い浮かべて吹き出してしまった。

「なにがおかしいんだ」
「だってコタツに速水さんって全く似合わないんだもの」
「そうだな~コタツに入ったのなんて…小学校入る前以来だ」
「ええええっ信じらんない!!無いんですか?コタツ!!」
「ウチは床暖房だ」
「セレブは違いますねぇ」
「湯、沸いてるぞ」
「あ」

なんかヘンだ。
あたしはウキウキしている。
ダイキライなハヤミマスミと楽しくお喋りしている。
「湯、沸いてるぞ」なんて、もしあたしにお兄ちゃんがいたら、言ってくれそうな響きだった。
麗がいる時とは全く違う、ほっこりとした気持ちになってる。

「しかし…『神田川』な感じだな」
「なんですかそれ?」
「知らないのか。昭和の若者の名曲だ」
「ふうん」
「こんな部屋に同棲しているカップルの話。銭湯へ二人で行ったりするんだ」
「…あたしの日常そのまんまですね」
「いっしょに出よう、って約束して、必ず彼女が待たされる。こんな寒い日でも」
「・・・」
「彼が彼女を抱いて、冷たいね、って言うんだ…」

速水さんと、目が合った。
見たこと無いような、深い色をしていた。
どきぃぃぃぃん、としてあたしはスグ目を逸らした。

「あ、えと、ケーキだったらコーヒーか紅茶、ですね。インスタントでもいいですよね」
あたし、なにドキドキしてるんだ!
ダイキライなハヤミマスミが、あたしを抱きしめるのを思い浮かべるなんて、どうかしてる!

それからのあたしは、余計なことを考えたりヘンな方向に話が行ってしまわないように、
サクサクとお茶の用意とケーキの用意をした。
さっさとお祝いをして、さっさと帰ってもらわなきゃ。

その様子を見ていて、速水さんはクスクス笑っている。
「なんなんですか?!」
「だから、言ったろ。部屋にふたりっきりには問題あるんだって」
「う」
このヒト、あたしが焦ってるって知ってる!こうなるってわかってて、あんなこと言ったの?!

「だから、簡単に部屋に男をあげたりしちゃダメだぞ。とりあえずおれは心配ないから」
「ちびちゃんを襲ったりしないよ」
「そんなことあってたまるもんですかっ!」

「さ、おいわいおいわい。火、点けるぞ」
「電気、消して」

ふわ、と速水さんの顔が浮かんだ。優しい笑顔をしている。
いじわるだけど…いじわるなのはやり方だけで、本当は優しい人なのかもしれない。
それでないと、こんなふうにろうそくの炎の向うで、優しく笑ったりなんかしないだろう。

「歌って…くださいよ」
「え」
「Happy Birthday の歌。」
「しかたないなぁ」

ダイキライなハヤミマスミは、想像していたよりも少し高音で、素直で伸びのある歌声だった。
英語の歌だから発音がネイティブな感じで、ちょっとテレながら歌ってくれた。
♪Happy biathday dear マーヤちゃ~~~ん♪なんて。
なんだかあたしまで照れ臭くなって…速水さんがちょっとはしゃいでるのかも、って思って
かわいい、なんて思ってしまって・・・

・・・大爆笑してしまった。

「おい。なぁ。笑い過ぎだ。そこまで笑うことないだろ!」
「だって、だって、マヤちゃん、マヤちゃんって…はははははは」
「お前はマヤちゃんだろうが!!」
「母さんは♪マーヤー♪って歌ってましたもん」

そのまま笑っていると、速水さんのテンションが急に下がったのに気が付いた。

「速水さん?」
「…ああ。おれの母は♪真澄くーん♪だった」
「ま・す・み・く~~~~~ん?!」

新たに爆笑してるあたしを見て、速水さんはコタツに突っ伏した。
すごい。ハヤミマスミが、ヘコんでいる!!
今までイヤミを言われたり笑われたりしたのを一気に挽回してる!!
あたしのテンションはMAXになった。

すると…
速水さんは、丸まった姿勢のまま、「も、いい」って言って…
ずるずるずる、と倒れて床にふて寝をし始めた。
さすがに笑いすぎた、と思って、声をかけたけど、無視。
ごめんなさい、笑いすぎました、って言っても、無視。

こんな子どもみたいな所もあるんだ、って少し驚きながら
席を立って傍まで行って、肩を揺すった。

「ね、だから、ごめんなさいって…」

その瞬間、ごろん、と仰向けになってグイ、とあたしの手を引っぱって引き寄せた。
あたしは見事に、ハヤミマスミの胸の上に倒れる。
あたしは…寝転んだ状態で…ダイキライなハヤミマスミに抱きしめられた。
速水さんの大きな手は、あたしの頭を掴んで、自分の胸に押し付ける。

心臓が一瞬止まって…再び動き出した時はすごい勢いでバクバクしている。

何も、言えない。動くことが出来ない。

どうしよう、どうしよう、ああ、あんな神田川の話なんか聞くんじゃなかった、
思い浮かべたばっかりに、あたし動けなくなっちゃってる、と
気持ちばかり焦って…そうしたら。


速水さんが、声をだした。


「マヤ…」

いつも聞いている、「ちびちゃん」じゃなくて、
いつも耳に届いてくる音じゃなくて、

速水さんの胸を共鳴して聞こえてくる声は、
そんな気が全く無いあたしの耳にも…
男の人ってどんななのか全く知らないあたしの心にも…

「セクシー」って感じてしまって、鳥肌が立った。

一瞬のうちにグルグル考えてしまってクラクラしてると

「…ちゃん。」って。

もいちど、「マヤ、ちゃん」と言って
はああああ、と大きなため息をついて、速水さんは頭を押し付ける手をぱたん、と床におろした。

「だからな、そんな無防備なことでどうするんだ。簡単に男を信じるな」
そう言って、固まっているあたしの両肩を掴んでよいしょ、と押し上げて座らせた。

「バカなことやってると、ロウソクが悲惨なことになってないか?」

うわ・あ・あ・あ・あ!!

ロウが溶けて、ケーキの上をてろてろにしている。

「は、速水さん、願い事!願い事なんか無いですか?!」
「へ?」
「誕生日の願い事です!いっしょにお祝いしてくれた人のも、特別に聞いてくれるんです!」
「そんなの、初めて聞いたぞ」
「いいから!はやく!」
「…マヤちゃんが、僕のことをこれ以上嫌いになりませんように」
「なんですか、それ!」
「いいから!君は?」
「じゃ、速水さんのゲジゲジイヤミ虫が素直な真澄くんになりますように!」
「なんじゃそりゃ!」
「消しますよっ!ふうううっ!!」


部屋は、真っ暗になった。


パチパチパチパチ…速水さんが拍手をしてくれた。
「おめでとう、ちびちゃん。願いが叶うといいな。」
「…ヘンなお願い事しちゃったじゃないですか!」
「おれは結構本気の願い事だけどな?」
「う…まあ、速水さんが素直な真澄くんになってくれるんなら、あたしも嫌いではないですけどね」
「………本当に?」
そんなふうに真面目にきかないでよ。

「しりません。さ、食べましょ食べましょ」

ロウがコーティングされて、まるでチーズみたいだね、とかなんとかいいながらケーキを食べて、
楽しい時間が過ぎていった。



「さ、そろそろお暇しよう。ありがとうちびちゃん」
「速水さんも、遅くまで引き止めてすみませんでした」
「いいや。久し振りに子どもの頃のことを思い出してとても楽しかった。ありがとう」
「えと…あの…また…」
「素直な真澄くんならデートに誘ってもOKかな?」
「む…無理なくせに…。」

あたしは精一杯、憎まれ口をたたいた。デートに誘われたら嬉しいかもって思ってしまったからだ。

速水さんははははは、と笑って、じゃ、あったかくして寝るんだぞ、って扉を開けて行こうとした。

そして、ふ、と止まって

こっちに向き直って
「もうひとつ、お願い事。ちびちゃんにたくさんの幸せとチャンスが訪れますように。祈っているからな」
そう言って、頭をくしゃ、ってした瞬間、


すっ、と顔が近づいてきて、柔らかな唇をあたしのほっぺたにちゅ、として…

「わ。」ってびっくりしているあいだに、扉を開けて出て行ってしまった。

今までのあたしだったら、ギャーギャー騒いでゴシゴシ唇の跡を拭いただろう。
ダイキライなハヤミマスミが、ちょっと気になる真澄くん、になったから・・・

思ったよりも優しくて柔らかな唇の跡が大切なものに思えてきて
そっと、大事に手の平でつつんでいた…

今日、誕生日にもらった、ささやかな贈り物。

大切な思い出。お誕生日のケーキ。
楽しいおしゃべりとかわいい歌声。
あたしのための、願い事。
やさしいキス。(ほっぺただけど。)

今までで…あたしの今までの誕生日のなかで、ひょっとしたら一番素敵な贈り物だったかもしれない。






        おしまい。








ああああ、書いているうちにだんだん楽しくなってきてズルズルなが~~~~くなってしまいました!

ところどころ、マスらしからぬ言動をしているかもですが、お許しくださいね。


拍手・コメントいっぱいいただいてありがとうございます!
お返事をしたいところですが、週末にまとめていたしますね。
今週は作品UPを優先しますので・・・
どうぞ、お楽しみに・・・☆



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2011-07-06 Wed 21:04 | | #[ 内容変更]
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2011-07-06 Wed 23:38 | | #[ 内容変更]
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2011-07-08 Fri 03:14 | | #[ 内容変更]
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