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雨やどり 1
2011-08-12 Fri 02:15
想いが通じ合って幸せ満開状態の本編ですが、
ちょびっと(初心に戻って)切ないお話も、と思い始めました。

ロム専でガラパロにはまり、そして自分でも書き始めて5ヶ月。
怒涛の日々を駆け抜けた心持でいます。

思えばガラパロを通して巡り合ったステキな方々…
何年も前からの大御所サイトマスター様、
そして新たにパロディ小説を始められたお仲間。
まさかの出会いでした…とても得がたいお友達ばかりです。
ありがとうございます!!

今日もこんなに『読みにくい』ブログに訪れて下さる方々に
「楽しみにしてるよ」と声をかけて下さる方々に
言い尽くせない、感謝の気持ちでいっぱいです。本当に、ありがとうございます。

それから、創作上の人物と言えど
ありえないような状況に追い込まれても文句を言わずにつきあってくれる
(…いや、文句はたらたらかもしれんぞ?)
真澄様、マヤたんに一番感謝、ですね♪
(夢でもいいから、『はね吉、いいかげんにしろ』って出てきてくれたらはううう、ですよね)




それでは、久々の切ない系を続きからどうぞ。








               雨やどり  1


 「忘れられた荒野」の評判が上々で、真澄は一安心していた。
紅天女の期限まであと少し。このまま行けば、マヤの芸術大賞受賞も不可能ではないだろう。
聞けば、真澄が観た「幻の」初演から、いくつかの違ったバージョンも上演しているらしい。

多忙故に何度も劇場に足を運ぶわけにもいかず、部下からの報告に胸を躍らせるのが精一杯だった。

ロングラン上演が決定した頃、久々の休演日と中打ち上げが催された。
有志の出演者・スタッフでの簡単な飲み会だ。
夕刻からのスタートだったが、直前に空が掻き曇り、ゲリラ豪雨が東京を襲った。

滝のような雨と雷が街を襲う。
歩道も車道も水浸しだ。

真澄は自分の車で帰社するところ、激しい雨の中をマヤが濡れそぼって歩いているのを見かけた。
簡易の折りたたみ傘は既に役に立っていない。
雨宿りをすることもなく、小走りになるでもなく、黙々と歩いている。
すぐに路肩に停車し、マヤを呼び止めた。

「何をしているんだ、このバカ娘!!」

マヤはゆっくりとその声の主を見た。途端に「うわ」という表情をする。

「風邪をひいたらどうする!舞台の途中に穴を開けることになるぞ!!」

「余計なお世話です!待ち合わせの時間に遅れちゃいますから!」

「この、バカ!」

「バカバカ言わないで下さいっ!!速水さんに関係ないでしょ!!」

立ち止まることなく歩いていってしまうマヤを、真澄はイライラして見つめ…
ついに車から降り立って走って追いかけた。
肩を掴んで立ち止まらせる。

「関係あるっ!俺の前に2度もびしょ濡れで登場するなんていい度胸だ!
なんでもいいから車に乗るんだ!」
「なんでっ!前だってあたしが頼んだわけじゃありませんっ!ほっといてよっ!」

「…ば…!」真澄が怒鳴ろうとした瞬間、稲光が走った。

「きゃ…!!」マヤが縮こまった時、真澄はマヤの身体を抱きしめた。
「こんな中を歩くなんて馬鹿げてる。素直に車に乗りなさい」

ほぼ拉致に近いくらいにマヤを引き摺って車に連れて行き、助手席に押し込み
運転席に廻った。

「シートが濡れちゃいます」憮然としてマヤが呟く。
「そんなことに構うくらいなら、濡れ鼠をひろったりしない。雷に打たれたりしたらどうする、バカ娘」

「速水さんだって…ずぶ濡れで観に来たくせに。バカ速水。」

ぶっ、と噴出して、真澄は盛大に笑った。
「せっかくのご招待を無にするまい、とあんな思いまでして観に行って、バカ速水とはね」

「…スミマセン。言い過ぎました。あの時はありがとうございました…大丈夫だったんですか?」
「あぁ、あの後熱が出た。重症だ」
「えええっ、ご、ごめんなさいっ!!」
「ははは、冗談だよ。熱が出るとしたら芝居に感動して、だな。冒頭、ちびちゃんハダカだったろ?」
「はっ、ハダカじゃないですっ!!速水さんのえっち!すけべっ!!」
「あっははははは!女の子にすけべ、なんて初めて言われたよ。ちびちゃんじゃそんな気にもならんのにな」
「ぅもうぅっ!セクハラ!イヤミ虫っ!そんな事いうならもう降りますっ」

ドアを開けて飛び出そうとするマヤの腕を掴んで、真澄は必死になった。

「ま、待て、すまん、言い過ぎた!あやまるよ」

マヤはますますブスッとして真澄を睨みつけ、シートに身を預けた。

「どこにいくつもりだったんだ」
「6時から有志で中打ち飲みなんです。○○町の居酒屋黒木屋で。」
「もう6時だな」
「だから急いで雨の中歩いてたんです!」


「どうしても…行くのか」

「はい?」

「どうしても行かなきゃ駄目なのか?」

「……」

からかうような口調では無くなり、自分を気遣うような響きの問いかけに、マヤは戸惑った。
見れば真澄の瞳には優しい光が宿っている。
いつも戸惑ってしまう、何故こんな自分にこの男は優しくするのか。
冷たいなら、冷たいだけにしてくれたらはっきり憎むことが出来るのに。
母の仇のこの男を、憎み続けることが出来るのに。
時折り見せるこの優しさを、自分は受け入れたいと思っているのだろうか。

「このままいれば必ず風邪を引く。主演女優が洟垂れ狼少女じゃ話にならん」
「ちゃんと乾いた服に着替えて、出直すべきだろう?送っていってやるから、そうしなさい」

そう言って真澄は車を出した。
「それか…」

「もう少し遅れてもいいなら、新しい服でも進呈しようか?」
「そ、そんなことしてもらったら悪いです…ふぁ、は、ふゎくちっ!」

「それもだめだ、きちんと身体を温めたほうがいい。俺の部屋に来い」
「ふえっ?」

車は浅瀬を行くように、波を立てて走る。依然雨足は強い。
びしょ濡れの身体は冷え始めて、真澄の強引な提案にも抵抗する気がなくなっていた。
この男は、一体なんなんだろう。
冷血漢と噂されるこの男が、こんなちっぽけな無力の自分にここまでお節介を焼く。
自分を潰すつもりなら、風邪をひこうが舞台に穴を開けようが黙って放っておけばいいじゃないか。

胸ポケットから1枚ハンカチを出してきて、自分の濡れた髪を片手運転で拭く男。
「…この前のお返しみたいだな」

ふと、胸がキュ、となった。






何も、言えなかった。





           つづく。




これって…「切ない系」になるのか?

ううう、わからなくなってきた。




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<<雨やどり 2 | はね吉 がらすの森 R-18 | 拍手・コメントありがとうございます!(7/9~)>>
この記事のコメント
雨宿り
はね吉さま
前に、ネタで提案したゲリラ豪雨を使って頂けたのでしょうか?
キャー ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃 キャー
実は、わたしも雨宿りネタ、自分でも書いてしまいました♪切ない系ではありませんが。
今日か明日かにUP予定ですので、お時間ありましたら♪
2011-08-12 Fri 11:41 | URL | とみぃ♡ #-[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-08-12 Fri 15:13 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-08-13 Sat 00:13 | | #[ 内容変更]
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