ぬくぬく? 5
新館は本館から100M程離れているということなので、着替えて防寒して出る。
新館までの雪道には、雪を固めて作った雪灯篭が点々と灯してある。
かわいらしい雪灯篭の上に、マヤは雪玉を作って乗せる。ひとつ一つ。
振り返ると小さな雪だるまが並んで道を照らしているようだ。
大晦日に急に冷え込んだらしく、雪かきされた道路は凍っている。
二人は滑らないように、しっかりと手を繋いで歩いた。
食事は蟹三昧と小さなお節料理のお重…
美味しい日本酒の燗と共に。
なかなか上手に蟹の殻を剥けないマヤのために、真澄は鮮やかに剥いてやる。
「速水さん~~~!うまっ!おいしっ!これ、たまんない!」
「よかったな。どんどん食べて大きくなれよ」
「もぅ、子どもに言うみたいに~~。速水さんだって食べて下さいよ!」
「おれはマヤを食べるからいい」
「またそんなこと言っちゃって!」
「俺は常々、胸焼けするほどマヤを食べたいと思っているんだが?」
「ばーか」
「マヤフルコースにマヤ三昧、デザートにマヤの盛り合わせ。もちろん別腹だ」
「速水さん…」
「ははは」
「すっごくヘンなこと考えてるでしょっ!!」
「ふふふふ」
「顔が左手で描いたみたいになってますよっっ!!」
「あはははは」
バカらしい話をしながら楽しく食事を終えて、本館に戻ることにした。
「ああ~~やっぱり食べすぎちゃった。少し動かないと初日にひびきそうです」
「このあと夜通し運動するぞ?」
「し ま せ ん 」
「ええええええええ」
「何ごねてるんですか!ね、ちょっと散歩しましょう?星も良く見えるし」
「そうだな。オリオン座、わかるか?」
ふたりは夜空を見上げる。
「オリオン座はすぐわかります!ほら、あの3つ並んだの、ですよね」
「じゃ、おうし座は?」
「ううう~~」
「オリオンの右肩の少し上のほうに釣鐘みたいな形の星があるだろう?あれが雄牛の角なんだ」
「あ、あれ!」
「そこからまた少し右上にいったところで、あの有名な『昴』がある」
「どれ?」
「スバルはいくつかの星が集まった星団だ。目の良い人は7個は数えられるはずだよ」
「あ…あれ・・・!」
「世界各国で神話の中になぞらえて、呼び名がいろいろあるのが特徴だ。
ギリシア神話で巨人アトラスとニンフのプレイオネの間に生まれた7姉妹の名前がついている。
まとめて『プレアデス星団』と呼ばれているが、日本では昴、または連なっていることから『むつら星』
と言うんだ。枕草子にも書かれているんだぞ」
「さっすが、星博士!!」
「おれは最近7つ数えられなくなった…」
「疲れ目?それとも老眼?」
「コ~~~~ラ~~~~~~~!」「きゃー!」
マヤが真澄から逃げるべく、凍った雪道をダッシュしようとして…
足元をとられて、つるっ、と滑った。
真澄が転ばせるまいと、すかさず抱きとめようとして間に合わず…
せめて自分が下敷きになってもいい、とマヤの転倒する先に飛び込んで…
マヤを守ることは出来たが…。
ごいん!
受け身をし損ねて、舗道にしこたま頭を打ち付けた。
…真澄は自分の目からスバルが飛び出した、と感じて…
そのまま、スバルが回転しながら天高く舞い上がって行くのを見た。
そして、あたりは、真っ暗になっていった…。
「速水さん!!速水さんっ!!はやみさん~~~!!」
完全に真澄は伸びている。脳震盪でも起こしたのだろうか。
マヤのか細い体格で旅館まで大男を引き摺っていくわけにもいかず…
携帯電話で119をプッシュしていた。
真澄はマヤと共に救急車で近くの病院に搬送された。
状況から多分脳震とうだと思われるが、普段からの激務と睡眠不足が祟っている。
聖にも相談をした結果、目が覚めるまでCTだろうがMRIだろうが、
しっかり検査してもらったらどうか、ということになった。
真澄が目覚めたのは、次の日の病室。
いったいぜんたい、なにがあったのか。
マヤがベッドにもたれて眠りこけている。
「マヤ…?」
「…あ、速水さん、気がついたんですか?っていうか…お目覚めですか」
「どうして…?」
「実は、かくかくしかじかで。何も異常は見当たりませんでした。よかったですね。
目が覚めたらめでたく退院です、ってお医者様もおっしゃってました」
「結局…今日は」
「ハイ。ちゃんと東京に帰る予定に間に合いましたよ。一安心です」
「おれは…」
「脳震とう、でした。それから過労。大半は過労で眠っていたようなもので。
でも無理が祟ったんですから、ゆっくり休めてよかったですよ^^
帰りは聖さんが迎えに来てくれますから。」
「ってことは…明日から…仕事始め、か」
「はい。しっかりリフレッシュしましたから、がんばりましょうねっ♪」
「イヤダ………」「はい?」
「おれは…もう少し…マヤとぬくぬく、ごろにゃんってしたかったのに…」「え?」
「明日から…仕事…やだ…いやだ~~~」「なに?速水さん、聞こえません」
「やだやだやだやだやだやだやだやだ………」蚊の鳴くような小さな声で駄々をこねる真澄。
マヤにはしっかり聞こえていたが、しっかり聞こえないふりを続けるのであった…。
おしまい!
ああ、かわいそうな…かなり情けない真澄様。
でも、スキ♪ うふ。
かなりオトナなマヤたん、もかわいいです♪
ゲリリク下さった皆様、こんなんですけど、いかがでしたでしょうか~~~><
スバルのくだりなんかムリヤリ感満載、ですよね…汗。
それでは今宵はこの辺で。
明日も良い日でありますように…☆
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