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Curriculum ~カリキュラム~ 3
2011-09-04 Sun 17:30


皆様お疲れさまでした!のろのろ台風12号。
1日警報でっぱなしで、テレビでは常にぴこぴこりーん♪とか
ぱらりぱらりろ♪とか、ぷるっぷぷるっぷぷるっぷ♪とか
点滅し続けていた。
巨大台風だし、被害も甚大。今年はなんかつらい。
年末の「今年の漢字」が何になるかな、と今から考える。
阪神淡路大震災の時は「震」だった。
今年は、と考えて
・・・

…まだ生生しくて考えられない、自分がいた。

さて、カリキュラムの3ですね。
前回暴力流血、死、の注意喚起のためにお読みになっていない方のために
さくっとしたあらすじを。

綾は武家屋敷に呼ばれて箏の演奏を披露しに行き、
そこの若い侍に乱暴されそうになり、
反抗したために斬られてしまいます。
政に連れ帰られる時に、「最期に」と
お互いにめおとになりたかった、
次の世では必ず見つけ出してくれ、といって
口づけを交わしながら息を引き取ります。
綾の葬儀の前にふたりきりになった政は
このまま生きながらえても復讐を出来るはずもなく
綾に渡していた梅の花かんざしで心臓を突き刺し
綾を抱きしめながら命を断ちました。

で、時代は流れ…


続きからどうぞ。






      

           Curriculum ~カリキュラム~ 3





 恋。それは相手の魂を乞うる力。
出会えば互いに惹かれあい、もう半分の自分を求めてやまぬ。

必ず出会うはず。
かならず求め合うはず。
何十年も、何百年もの孤独を抱きしめ、おまえを待ち焦がれている。

おまえを見つけ出す。かならず。










 速水真澄は完全に絶望していた。
人間として、男としての責任を考えると、自分の人生の幸せを捨てるしかないのだろうと。

想いが通じ合う前まではそのつもりだった。
しかし、一度手にしたぬくもりと愛の喜びを知ってしまうと
その生き方は「死にながら生きている」ようなものだ、と思えた。

 この大切なときに、マヤを傷つけるようなことだけはしたくない。
しかし今のこの事実を知れば、どうなってしまうのかは容易に想像できる。

今はあらゆる感情を一切殺して、目の前にある仕事を淡々とこなすだけだった。
もう、表情さえ無くなっているのかもしれない。
水城秘書も無駄な口を挟むことがなくなった。
上司と同じく、淡々と自らの仕事をこなす。
時々憐憫の思いで上司を見つめることしか出来なかった。


映画試写の会場で、真澄はある女優とすれ違った。
軽く会釈だけのつもりだったが呼び止められる。
「あの…速水社長、また近々お伺いしてもよろしいかしら?」
唐突な申し出にいぶかしんでいると女優はにっこりと微笑み
「あなたの想い人から、お訪ねするようにと申し付かっていますので」と小声で言う。

真澄はギクリとしてその女優の顔をまじまじと見た。
マヤと交友があるとも思えないし、なぜそんな事を知っているのかも謎だ。

「何を仰っているのか,私にはわかりませんが」
「今伝えておかなければ取り返しのつかないことになってしまう、と言ってるわ。
 どうするかはあなたの勝手だけれど想い人の気持ちは酌んであげて欲しいの」

自分の利益や売名のために擦り寄ってきたのではなさそうだ、と思った。
真剣に囁く姿になぜか納得させられてしまい、アポをとることになった。

マヤのことが絡んでいる様子なので、失礼を承知で秘書も帰途についた時間帯を指定した。
その女優もそれは始めから承知の上のようで快諾してくる。

その女優について早速調べる。

…宮脇比呂。十年近く前に霊能力があるとのことで有名になり、
スピリチュアル・ブームにのって相談番組のMCなども努めたことがある。
ある科学者や心理カウンセラーによって番組がたたかれてからはブームそのものも去り、
現在はイメージの強さからなかなか脱却するのが難しく
2時間サスペンスの端役ばかりに出ている。

「失敗だったか」
マヤのことを出されると冷静さを欠くのは悪いクセだ。
こんな些細なことから足をすくわれることはいくらでもある。
断ればいい。そう思った。
しかし頭のどこかで、話くらい聞いてみてもいいじゃないか、という気がしてくる。
そうしているうちに、約束の時間がくる。

応接室に比呂をとおし、自分で茶菓をすすめる。
「お話というのはなんでしょうか」
「速水社長のことだから、だいたいの見当はつけていらっしゃるのでしょう?」
比呂はゆったりと丁寧に語る。
「ええ、まぁ…」
「噂どうりのお人なら、鼻も引っ掛けない部類の話よね」

真澄は黙っていた。

「なのにあなたは私と向かい合っている。あなたが話を聞かなくてはならないから、なんです」







今、あなたは「生きながら死んでいる」というような苦しみのなかにいるようですね。
そう、愛の喜びを知った途端、引き裂かれようとしている。
何故そんな事を知っているのだ、とお思いでしょう?
あなたは信じないのでしょうけど、あなたを護っている方々が教えて下さったの。

あなたに会いに来るようにと命令したのは、あなたの想い人を護る方よ。
実際には誰があなたの想い人なのかを私は知らないのです。不思議でしょう?

あなたとその方とは、何度も恋仲になるのだけど生きている間に結ばれなかった魂なのです。
前の世で、次に生まれ変わっても、必ず出逢って結ばれよう…と約束をして。

人の魂というのは、何度も生まれ変わり続けるのですよ。輪廻転生ともいいますね。
生まれ出てくるときに、その魂の宿題を与えられている。
そのために、いろいろな試練や挫折を与えられるわ。
それを乗り越えて成長するたびに、魂の徳は高められ、悟りに近づいてゆく。
失礼だけれど、今の苦難もあなたのために計画された試練であり、
病に臥せっている方にとっても魂が高められるために計画されたものなのです。

ただ…命を粗末にした方がいるのね…?
そのために、こうして私がしゃしゃり出てきたというわけなのです。

与えられた命を、粗末にしてはいけないわ。
人を救うためにわが身をかえりみず、というのではなくて
自分の運命を呪いながら見せしめのように命を断つとか
将来の自分を悲観して命を断つとか
自分だけの都合で自殺をするなんて絶対にしてはいけないの。
何度も生まれ変わり、徳を積んできた魂たちへの冒涜よ。

と、いうのも…
あなた自身が、想い人と添うことが出来なくて命を断った魂の、生まれ変わりだったからなのです。
そうね…前の世からの名残りといえば…魂の片割れどうしで…梅の枝のようなものを贈りあっているわ。
そして…箏が別れのきっかけになっている。
そして…何か一芸に秀でた方だったみたい。
どう?思いついて?

さすがに…心当たりがあるようですね。
皆、あなたを案じているようです。
このままあなたが捨て鉢になって、自暴自棄になってしまわないか。
それか、命を断つようなことにならないか。
まさか、と笑われるけれど…
「生きながら死んでいる」のもそうではなくて?
あなた片足棺桶に突っ込んでます、みたいな顔をしてたわ!!

…あら、ごめんなさい。


魂たちが訴えているわ。
もうそろそろ、現世で恋が成就して、幸せを実感する経験が欲しい、と。
それが出来るようにするために、ふたりをムリヤリ引き合わせた、と。
成就する段階にきているのだから、もう命を粗末にするような選択はしないでくれ、と。

以上。信じるか信じないかはあなたのご自由になさってください。
ただひとつ憶えていていただきたいのは、
これまでの試練や苦難は、あなたが高められるための教育課程だった、ってことです。
そのための教師として、いろいろな人に会わされている、ってことです。
そして、あなた自身も、誰かのカリキュラムの中の教師役として活躍していた、ということです。

生きてゆくことに、偶然はないのです。
すべて必然なのですよ。

さぁ、それを知ったなら、
あなたのするべきことは見えてくるはずでしょう…?

ぜひ・・・私を遣わした魂たちのためにも…幸せに、なってください。

もう、あなたはじゅうぶん……だから、幸せを目指しなさい。







真澄が口を挟む間も与えず宮脇は語り、終えるとあっさりと帰っていった。
途中、梅の枝の話の時に、不意に涙が出て止まらなくなった。
何故だかわからないが、嬉しいような哀しいような懐かしい思いが胸をついた。

真澄はソファの背もたれに身体を預けたまま、沈思黙考していた。
比呂を遣わしてきた魂、というのはおよそマヤにかかわるものなのかもしれない。
こんな話は子供騙しと信じないのが速水真澄だが
いつか速水の名を捨てる気ならば、頭の片隅に置いていてもいいのかもしれない、と思った。

「前世から約束されて出逢った魂」
「必ず、次もお前を…見つけ出すから」

そんな台詞を呟いてしまった。

まったく…どうかしてる。乙女のようだな、速水真澄。自嘲してしまう。

しかしその台詞を呟いていると、恋しい思いが蘇り、血が滾るのが戻ってくるようだ。


「では…その障壁のような教師殿らに…」

真澄はぽん、と立ち上がって久々に煙草を口にした。
忘れるはずもない流れるような所作で、ライターを弾き、火を点ける。

「真摯に立ち向かうとしようか」


珍しく星の見える夜空に、細い三日月が浮かんでいた。









        おしまい。





最後、長くなってしまいました!
スピリチュアルな話をもってきて、人によっては不快な気分になられていたら、ごめんなさい。
ハッピーエンドに向かって、頑張れよ、マス!!ってエールだけのお話でしたが…ごめんなさい。

やっぱりね、命は粗末にしちゃいけないんですよ、
苦しくても生ききらなきゃ。

はたしてワクチンとか、リハビリになっているのだろうか?ですけどね。

で。

初めて「オリキャラ」登場の回となりましたが。
宮脇比呂さん、ね。

みやわきひろ…


・・・


・・・

ばんざーいい、ばんざーい、ばんざーい・・・




  逃げっ!!



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この記事のコメント
どんな風に「カリキュラム」っていう題名につながるんだろうと不思議に思っていましたが、なるほど!
偶然はなくて、すべて必然。
私もそれ派です。
なので、はね吉さんの創作話が大好きですが、今回のお話、一味違う展開が新鮮でした。
それでは、また~♪
2011-09-06 Tue 21:30 | URL | Megママ #-[ 内容変更]
はじめまして~Megママ様!お越しいただいて、ありがとうございます!
「カリキュラム」の考え方を知ってから、自分の運命や人との関わり方について、
前向きというか、少し楽になったというか客観的になったというか
そんな変化がありました。
宗教的な話に繋がっていきそうな話題だけに、さらっと流していただけると…
某泉にはたいへんお世話になったはね吉です^^
さすがにこの展開には悩みました!滲み出てますね…うへへ。
またお越しくださいね♪

2011-09-07 Wed 01:21 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
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