片翼の天使 4
それが恋だと気付くのも遅かった。
一瞬のうちに引火して、燃え上がる想いだった。その時すでに、咲かない恋だとわかっていたけれど。
隠しておくべきだと思った。
焚きつけなければ、鎮火するはずの恋の炎だと思った。
けれど理性に反して、心が燃えるのを抑えられない…。
不思議な体験が、抑えられない想いに拍車をかける。
「魂の片割れ」伝説が、淡い夢をはこんでくる。
二度目の恋は、1ヶ月と経たないうちに儚く散った。
散ってしまえば恋はお終いだと思っていた。
けれど想いが深ければ深いほど、そこから苦しみが続くのだとは知らなかった。
初めての恋とは何もかも違う。
恨みに思っていた男。
自分を陰からずっと見守り続けてきた男。
その矛盾や謎が、いつまでも心を揺さぶり続ける。
忘れようとすればするほど、
愛しい想いに、心が蝕まれていくようだった。
魂の片割れだと、彼をそう信じたかった。
そうではないのだ…そうではないのに。
彼は自分の心の中に…魂の中に居座り続ける。
逃げたくても逃げられない、永遠の心の枷になるのか。
「マヤちゃん、ほら、アンパン半分コ」
桜小路が半分のアンパンを差し出してくる。
「ありがと。あ、おいし!このアンパン!」
桜小路はいつも優しい。
自分が恋の痛みに耐えようとぼんやりとしていると、決まって声をかけてくる。
その気遣いが嬉しい。深くまで立ち入るわけではないけれど、明るく朗らかに癒してくれる。
付き合っていた彼女と別れて、交際を申し込まれている。
桜小路のような青年なら、自分は素直に心を預けてゆけるのかもしれない。
悩みや苦しみ、寂しさを感じずに恋を全うできるのかもしれない。
ただ。
別れた彼女のことをおもう。
自分と同じくらい、苦しんでいるのだろう…
そう思うと、桜小路の優しさにそのまま甘えるのはどうか、と。
紫のバラの人…真澄に向かう恋心と同等の気持ちを持つことが出来るのか、と。
…今は、阿古夜になることに専念しよう。
真澄のことも…桜小路のことも…考えていては阿古夜の恋に近づけない。
紅天女の恋は…自分のような小娘の恋とは次元の違う恋なんだろうと思う…
命懸けの…いや、自分を賭しての恋。
自分の中の、どこを探しても辿り着けない恋…。
だれか、教えてほしい…。
本当の恋を。
続く。
どっかな、マヤたんの思い。
それでは、今宵はこのへんで。
明日もいい日でありますように…★
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