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はだかのままで 8
2013-02-05 Tue 23:22
今宵も

 はね吉 がらすの森 ~着地点はドコだ?!~

 …に、お越しくださいまして、ありがとうございます^^


「お題」…ドコにいってしまったんだ?いつでてくるんだ?そのキーワードは。
つるピカ速水さんがワタシを責めるの。うううう。

収拾がつかなくなって立ち止まってしまって
まるでどこかの…ゲホンゴホン。

とりあえず、いってみよう!







  続きからドゾ!







  はだかのままで 8






 試演の全てが終了したシアターXは、まだ異次元の熱さを保ったままだった。
誰もが夢幻を現実のものとして味わい、ひとり一人が物語の一部となり
感動のあまり涙の止まらない者、立ち上がれない者、逆に狂ったように声援を送る者など
誰一人としてその場を去ろうとしなかった。

その中を一人の女性が乗る車椅子とその世話をする若い男性が会場を後にしようとしている。
誰もその姿に気を止めようともせず、ただゆっくりと歩みを進めていた。




 「すまない、聖。最後の我儘を聞いてほしいのだが」
 「最後などと仰らないで下さい…僕はいつまでもあなたの力になるのが望みなのです」

舗装されていないシアターXでは車椅子を真っ直ぐに進ませる事は難しい。
介助する男性は細身ではあったが、どこかに屈強な筋力を備えているのだろう、
車椅子に乗る女性のゆるやかなブロンドが時たま揺れるくらいで
しずしずと会場の外を目指してすすんでいく。

 「あの子に…最後の紫のバラを贈ってやってほしい。ただ1本でいい。
  おれがあの子の紅天女を見る事が出来て、
  もう思い残す事がないくらいに喜んでいたと伝えてほしい」
 「わかりました。思い残す事が無い…その言葉に嘘はありませんか?」
 「ふふふ…なんでもお見通しなんだな、お前は。あの子には黙っていてくれ。
  これからのあの子をそばで見守る事が出来ないのは、
  身を切られるように辛い」

ブロンドの女性は車椅子を止めさせて、蒼い瞳をまだ熱の残る客席に向けた。
介助の男性も横について、涼やかな瞳を女性の見つめるものに向けた。

 「大丈夫です…マヤ様はあんなに観客の支持を受けています。
  紅天女の継承がどちらに決まろうとも、観客がマヤ様を求めることでしょう。
  ぼくも引き続き、マヤ様の助けになろうと決めていますからご安心ください」
 「『ぼくがあの子をいただきます』と言ったお前に任せるほうが不安だ」
 「ははははは…根に持たれているとは!!お灸が効きすぎでしたね。
  ははははは」

車椅子がまた、カラカラと進み始める。


 「しかしお前には本当に世話になりっぱなしだった。
  おれが旅立った後はお前の自由にしていいんだぞ」
 「いえ…ぼくはやはり御前様の元に戻ります」
 「おれの責任を取らされるかもしれない…命の保証ができない」

 「確かに今はとてもお怒りになっておられますが…
  真澄様を失ってお辛いのは御前もご一緒なのですよ
  お力になって差し上げるのが、ぼくの命題ですから」
 「すまない。オヤジはまた現場復帰せざるを得ないだろう。助けてやってくれ」


 「やはり…おまえの言うとおり…誰もわからなかったな」
 「真澄様は普通でいても目立つ方ですから。
  へんに目立たぬようにするとかえって不審がられるので
  なら逆に違った目立ち方をしてしまったほうが真澄様とわからないのでは、と思ったのです」

 「女装とは恐れ入ったな」
 「ブロンドのブルーアイ、驚くほどお似合いです」
 「からかうなよ」
 「坊主頭で修行僧か虚無僧姿なんて場にそぐわないでしょう?
  そんな人が芝居を観に来るほうが珍しいです」
 「たしかにそうだな」
 
 「しかし身長がありますから…それで、車椅子を」
 「ムリヤリとはいえ、なかなかの設定だと感心したよ」

 「さっき写真家のピーター・ハミルに撮られたぞ」
 「美しいマドモアゼルは見逃さないお方ですから」
 「またからかうのか」
 「高名な写真家が週刊誌に売るとは思えませんので…」
 「まぁいい、どうでも。おれの知ったことじゃない」

 

 車椅子は会場を出て青いスポーツタイプの車の前で止まると
ブロンドの女性が立ち上がり、助手席に乗り込んだ。
聖が車椅子をたたんでトランクに積み込むと運転席に座りエンジンをかけた。

 「では、ぼくの部屋で着替えを。とうとう出発されるのですね」
 「あぁ。本当にお前には世話になった。何から何まで」
 「全くです…丸刈りのあなたを見た時はさすがにぼくも叫んでしまいました。
  マヤ様が叫んでいたのはこのことだったのか、と」
 「まさかおまえが腰を抜かすとは思わなかった」
 「そりゃそうです、紫のバラのひとの正体が
  とっくの昔にばれていたことも含めて」
 「ははははははは」
 「幸せな時を過ごされた、ということだけが…唯一の安心でした」

女装のままで、ふ、と真澄が頬を染めた。





 「そうして頬を赤らめると…本当の女性のようで
  ……ときめいてしまいます、真澄様」

 「わ、わ、わ、前見て運転しろ!!ヤメロ!!!」









 聖の部屋で白装束に着替えた真澄は晴れやかな表情をしていた。
雲ひとつ無い秋晴れの空のした、からみついた昔を脱ぎ去ったはだかのままで
失くしてしまった本来の自分を探す旅に出発したのだった。









               つづく。










ぎゃーーーーーーー!

ごめーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!



  逃げっっっ!!!!




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