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ひとつのまこと 2
2011-03-03 Thu 02:12
桜小路くんをどうしてあげたかったのかわからない展開で
交通整理はやっぱりこの方にお願いすることにしました。

よろしくお願いします!









         ひとつのまこと 2





慌しい気配の病室は、ベットにつながれている青年を気遣うように
敏速に、けれど音をたてないように動いていた。
彼の母親はただただ心配そうにハンカチを握り締め、
妹は反して「奇跡的に骨折だけで済んだんだから、若いんだし大丈夫よぅ、アニキだったら!」と
母親を励ましている。

俺は医師に詳しい容態を聞いていた。

妹の幾分か楽観的な判断は、大事な舞台を控えている我々にとっては
申し訳ないが少しの慰めにもならない。

試演に間に合うのか、無理なのか。
全治2ヶ月。それはギプスがとれるまで、ってことか?

俺はこいつをどうしても使いたい。
あの天才女優の演技を純粋に受け止められるのは、
今はこいつだけだと信じているからだ。
間に合わせに野心と独りよがりの自信にまみれている俳優などにまかせて、
今更かきまわされてたまるか、ってんだ。

ボリボリと頭をかきむしっていると、
静かな病室にそぐわない、大音響でドアが開いた。

「桜小路くん!!」

そう言ったっきり、立ち尽くしてしまった北島に、
母親と妹が対応した。
こんな大事な時に、こんなケガを・・・
マヤさんにも、申し訳なくて・・・
忙しいときに、来て下さってありがとう・・・

北島は、ただ涙を流しながら首を横に振り続け、言葉にならなかった。

俺は間に割って入った。
「すみません、ちょっと北島に話があります。よろしいですか」
北島の肩をつかんで、病室の外に連れ出した。

病院の中庭のベンチにうなだれて座っている北島に向かって、俺は口を開いた。

「まさか、ってことが起こるもんだよなぁまったく。」

「あたしが悪いんです・・・」

「なんで北島が悪いになるんだ。順を追って説明してくれ」

「あたしが先に帰って、なんて言ったから…
一緒に帰っていたら、桜小路くんは事故になんか遭っていなかったはずなんです」

「ちょっとまて、話が見えん。まずは昨日、船から降りられなくなった辺りから説明してくれ」

「・・・・・・」

北島は、どうしてそんなことまで?と言いたげな不安な表情をしている。

「なぁ北島。俺だってワンマン演出家とか言われているが、
役者のプライバシーに口出しをするような野暮な人間じゃねぇよ。
ただな、いけ好かない鷹宮のおばはんのことといい、
その前の写真のズタズタ事件といい、
お前の周りはジェーンの時に比べてあまりにも妨害になることが多いんだ。
役者としての、感覚の引き出しが増えるのはいいが、どうやらお前さんが持て余すほどの
ことになってしまってるんじゃないか?」

黙ったまま、うつむいている北島。

「もうそろそろ仕上げの時期だ。専念しなきゃいけないんだよ。」

「月影先生のところで、お前は歳若い頃からたった一人で乗り越えてきたのは
俺もわかっている。身内も無くしてしまったお前さんを見ていると、俺はたまらなくなるのよ。」

「なんとかしてやりたくなる。
お前さんの類稀なる才能が翻弄されて潰されてしまわないかと心配でかなわんのだよ。
そうだな、俺は貧乏演出家で、お前の紫の薔薇の人の様には出来ないが
それでも俺のつくる芝居のなかで最高に輝けるようにしてやりたい。
お前さんには親父さんがいないが…俺は娘のように思っているんだ・・・」

北島は涙に潤んだ瞳で俺を見た。

「先生、そんなふうに思ってて下さったんですか…」

一瞬照れた。そんな眼でみるな。
照れ隠しに頭をボリボリしてみる。
「俺ばっかりじゃねぇや。およそ速水の若旦那だってそう思ってるに違いないんだ」

一瞬にして、北島が全身を紅く染めた。
な、何なんだその反応は!!!

一か八かだ。

「速水の旦那と何かあったのか?」

北島は両手で頬を覆った。隠したって隠しようが無い。

「鷹宮のあの出方から考えると…何かと絡んでるのは確かだな。
俺は絶対に口外はしない。全部吐き出してすっきりしろ。
ただ、俺は芝居に対しては責任があるからな、多少の口出しはするかもしれんが・・・」

北島は口をつぐんだまま、靴の先をにらんでいる。


「・・・・やっぱり、お前さんの親父にはなれないか・・・」

「いいえ・・・いいえ、先生・・・」

北島は、静かな瞳をして、俺を見た。

「聞いていただけますか?あたしのこと・・・」



俺は、ぶるっ、と震えがきた。
一真と対峙する時のような、神女の表情になっていた。








今日は、ここまで~~~~!
黒沼さん、渋くって好きです♪
実ははね吉はすっごいオヤジ趣味だったりもします。

(小学校4年生の時に、田村正和に惚れました/////)






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この記事のコメント
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2011-03-03 Thu 23:39 | | #[ 内容変更]
Re:○○ラさま
コメントありがとうございます!!
「パロ」と言うにはあまりにも拙すぎるので、「デビュー」と堂々言えマセン…///
初めてのコメント?に○○ラさんなんてもったいないもったいない・・・
○○ラさんのようにさくさくと美しい文章が出て来ないので、
あらためてガラパロ作家さんの構成力や文章力に敬服してます。
それも、毎日更新なんて・・・!
ハァ・・・おそろしいコ・・・

このごろ、現実逃避にもパロが役立つなぁ、なんて思い始めてますっ!!
フフフフ。

今後ともヨロシクです♪
ありがとうございました~~
2011-03-04 Fri 08:17 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
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