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ひとつのまこと 7
2011-04-10 Sun 03:57
お久し振り、になってしまいました。
・・・いつものことですが。

ひらきなおるな。

いよいよ桜が満開、春らしい日々。
乱痴気お花見はあきませんけど、(らんちき、といれるとランチ気、と変換。)
しみじみ花見酒、いいですよね。
どっちかというと、ぽんしゅ。
ビールは乱痴気に?

さて、お話は5月号の、稽古場のシーンから後、ということになります。

それでは、どうぞ。





              ひとつのまこと 7







僕は、もう一度一真を演れる喜びに浸っていた。
まともに歩けなくたって、例え這い蹲ってでも僕は僕の一真をやってみせる。
マヤちゃんにだって負けていない。例え紅天女が亜弓さんに決定したとしても、
赤目さんに一真を譲るつもりはない。
僕のぐらぐらしていた芝居魂に、再び火がついたとおもえた。

「なんだ、まだいたのか。病院には帰るんだろう?」

黒沼先生が戸口に立っていた。

「だったら俺もいっしょに叱られてやるから、その前に一軒つきあえ。」



いつもの屋台に連れて行かれて、僕にはウーロン茶、先生はビールをたのんだ。

「どうだ…その…北島とは話したのか。」
「いいえ・・・僕が意識してしまって。一言も話せてません」

「乗り越えられそうか」
「…自信無いです。と、いうより、彼女のことがよく解らなくなってしまって」

「速水の若旦那のことか?」


そう、ずばっと斬りつけないでくれ。
心の中で、悪態をついた。


「僕は…速水さんのこともよくわからないんです。
あの人がどう彼女に関わろうとしているのか。
紅天女の上演権がらみで、随分と月影先生にも、劇団つきかげにも
相当な酷いことをしてきたって聞いています。

マヤちゃんにとても憎まれているはずなのに、なんやかんやと姿を見せては
マヤちゃんをからかったり、怒らせたりしている。
そうかと思うと嵐の中でも舞台に駆けつける。

マヤちゃんにとって速水さんが、
速水さんにとってマヤちゃんがどういう存在で何を求めているのか・・・」


僕の脳裏にふたりの抱きしめあう姿がうかんだ。
その表情は、どちらも真剣で・・・


「恋、だな。」
先生がぼそ、と呟いた。グラスをあおって、飲み干す。

まさか、と思い続けていたその言葉を、僕は案外冷静に聞いていた。
この人も、そんな風に思うのならやっぱり認めざるを得ないのかな、なんて。

「どっちも呆れるくらいに不器用で鈍感で卑屈になってた。素直になった。」

「素直に…なったんですか。あの日に。」
「詳しいことは知らんが、そういうこった。」

「うあぁぁぁ、謎だぁ~~~速水真澄ぃ!!!」

アルコールが一滴も入っていないのに、ぼくは自棄になって叫んだ。
本当にアルコールを飲まないで良かった。
相当なカラミ酒になることはまちがいない。

「そこで、だ。桜小路。」

「紅天女の練習に入ってすぐ、北島の絶不調の時にいろいろ助けてやっただろう。
北島はあれでなんとか表向きは元気になったが、本当の恋心を会得するためにはあの日が必要だった」

「北島は阿古夜にのせてくるぞ。獲得した恋の喜びを。お前、受け止められるか?」

「うううう」

「失恋の痛みを、誰かに被せて忘れられるか?誰かいるか?」

「いや・・・もう同じ失敗は繰り返せません、さすがに。」

「お前、思ったとおりのウブなヤツだな。ドーテーか。」

「ううううう」


黒沼さん、ニヤニヤニヤニヤしている。サドか。
僕は自棄になって叫んでしまった。

「だったら先生フーゾク連れてって下さいようっ!!」

「おっ、この足は立てなくてもコッチは勃ちます、ってか!!若いっていいねぇ!!」
ガハハハハハ、と笑ってバンバン背中を叩いてきた。

「病院で怒られついでにコッチは大丈夫でしょうか、って聞いたら、退院させられちまいそうだな」
「そのほうが好都合、なんて言うんでしょ、先生。」

「うはははは」
「ははははは」


男の失恋なんて、こんな感じで男に慰めてもらう?のがいいのかもな、と思った。
男の気持ちなんて、女に解るはずがないんだ。
どんなに長い間想ってたって、自分で処理するしかないんだ。

自分の気持ちは封印しても、僕は一真になる。
一真として、阿古夜と魂の恋をする。
それは誰にも譲らない。絶対に、だ。
桜小路優の気持ちと願望をまとった一真では、真実味が出なくても仕方がなかったんだ。
自分を、棄てる。・・いや、忘れるんだ。
僕は、本当の一真になる。


「いい、顔になったな」
黒沼先生がニヤ、とわらった。

「さ、叱られに行くかぁ~~。」
席を立ちながら、僕は先生に念押しをする。

「退院になってもいいですから、連れてって下さいよ。
皆で行こうって話しになっても、イメージ損ねるからって
誰もおれを誘ってくれないんですからね」

「優くんは優等生だからねぇ。ひと皮むいてやらなくちゃな。」

「・・・そっちは大丈夫です!」

「…だれもそんなこと言ってねぇじゃないかよっ、このスケベ野郎っ」


先生は松葉杖の俺に、肩を貸してくれた。

「いい男に・・・なれよ。」

「ええ。絶対に。速水さんに焼き餅焼かせるような、色男になります」


「う~~~~~ん・・・それイメージじゃないけどなぁ・・・」

うわ、先生、近くで頭ボリボリしないで下さいって!!!







      おしまい。






やっと、完結しました!
もう4時じゃん!

あと、題名考えたらちゃんと完成しますね。


どうしょっかなぁ~~~。

読んで下さった方、ありがとうございます!
良かったら、感想など聞かせていただけるとメッチャ嬉しいです。
ダメだしも嬉しいです!

また、ボチボチパロディ書けたら・・がんばりたいです。
なんと言っても夢の世界ですから。





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