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ひとつのまこと 5
2011-03-27 Sun 03:45
久し振りに、パロディのほうにも。
なんやかんやで、前回に「明日~~」と逃げてから随分経ってしまいました(反省)
気が付いたらもう別花発売日やし。ひぃ~~~~~ん

今のところ、まだ新号はゲットしておりません。

この流れで書けるのが最後になってはイカンので、やってみましょう…




             ひとつのまこと 5





黒沼さんは、ふるふる、と頭を振ってため息をついてから、
頬杖をついておれを見た。

「まあ、いい。おとぎ話のような存在のままのほうが北島にはいいのかもしれんしな」

そう言って冷や酒をグビ、とあおった。

追求のまなざしが逸れたので心の中だけでほう、と息をついた。



「じゃあな、大都芸能社長の速水真澄さんに伺います、だ。
あんたと北島マヤの間には確執があって、犬猿の仲だ、というのはこの業界では有名な話だ。
それは会長であるあんたの親父さんと北島の師匠である月影千草との確執を受け継いだものだ、とか
北島が大都芸能に所属していた頃のスキャンダル事件で大都が大きな被害を被ったからだ、とか
大都が経営している劇団オンディーヌを脅かす実力派劇団ということで
劇団月影をあらゆる罠にはめて潰したからだ、とか
そういったことには疎いおれの耳にもいろいろと聞こえてきたもんだ。

あんたの評判は、やれ非人間だ、冷酷だ、血が通ってないだと散々な言われ方だ
だが、おれにはそうは思えなかったんだよなぁ」

「いや…全くの噂どうりの人間ですよ、僕は」

「紅天女の継承についても、姫川亜弓ならオンディーヌ所属だから大都の意向が通用するかもしれんが
もしも北島が選ばれた場合、大都がどんな手を使って北島に近づくのか、と
芸能関係の者はいろんな憶測をとばしあっている。
犬猿の仲でとおってはいるが、あの社長のことだ、自ら色仕掛けでうぶな小娘をたらしこむ事くらいは…」

思わず、黒沼さんの腕を掴んでいた。

「・・・噂どうりの人間、なのかい?」
「・・・失礼しました。僕としたことが」
「・・・いいや。」

おれの空いたグラスにビールを注ぎながら、黒沼さんは楽しそうだ。

「今は…おれも北島も紅天女を勝ち得たい。そのことで頭はいっぱいだ。
しかしな、もし獲れなかったとしても、あいつはこの世界で生きていくんだよ。
いや、生きていけるようにしてやらなくちゃいけないんだな。
あいつは演劇以外のことはからきしダメだ。
そして人を疑うことを知らない。騙されやすい。
それこそ、さっきのようなやり口で近づいてくるヤツだっているだろうよ。
あいつを利用して潰そうとする有象無象の輩から守ってやる必要がある」

「おれは寄る辺無いあいつを、板の上で守ってやることしか出来ない。
演出家の出来る事なんて、それっぽっちだ。
あんたはどう思う?おれとは逆の、有象無象の輩のひとりなのか?」


この人は…聞きにくいこと、言いにくいことで追い詰める天才か?
いつものおれならとっくに巻き返しているはずなのに。
あの子が関わるとこうもダメなのか。
黙っているだけだとますますなので、なんとか返事をする。


「・・・あの子は・・・例え紅天女を獲れなくても、演劇界の宝になることは間違いない、と
僕は思っていますよ。
黒沼さんはご存知かどうかわかりませんが、あの子を天涯孤独にしたのは僕自身です。
あの子の母親に僕は誓ったんですよ。彼女は嫌がるかもしれないが、僕がずっと見守り続けます、とね…」


「あんた、やっぱり…北島を愛しているんだな」

おれはグラスを倒して割り箸を地面に落とし、いっしょにかじりかけのタマゴも落とした。

ガハハハハハ、と笑いながら背中をバンバン叩かれた。

「いやぁ~天下の速水真澄の取り乱す姿を拝めるなんて、いい冥途の土産になったな~」
「止めて下さい、勘弁してくださいよ」

「おれとあんたの仲だ。他言はせんよ。」

さて、と黒沼さんは立ち上がった。

「もうお帰りですか?」

「ああ、優等生をオトナの男に仕上げなくちゃならんのでね」

「?」

「今はオンナを抱かせるわけにはいかんからな~。あ、酒も入院中はご法度か。はっはっはっ!」

「だからな、若旦那。北島のことはあんたに任せる。しっかり守ってやってくれ」

最後にばん!と背中を叩かれ、またグラスを倒しかけた。



「ついでに勘定もな~~~♪」


ヒラヒラヒラ、と振り返らずに手をふりながら、ネオン街に紛れて行ってしまった。

まったく。敵わないな。

「マヤは、確かに、僕が守りますよ…」


冷や汗をかいたり慌てたり、散々な会合だったのかもしれないが、気分は決して悪くは無かった。
このまま歩いて、屋敷に戻るか。

「若旦那、生憎つり銭が切れてしまいましたんで都合してきます。少し待っててくださいな」

「いや、いいよ。口止め料のつもりだからね」

「や、でも、こんなにたくさん…」

「本来ならこれで脅迫できるほどの企業秘密なんだよ。口外されては我社は潰れかねんからな、
監視のためにまた来るよ。」




へへ、と親父が笑った。

「へい。お待ちしておりますよ。」

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