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19883 りくえすと 4
2011-09-19 Mon 13:59
敬老の日、ということで。

お待たせしっぱなしの19883りくえすと、4です。

そろそろ、題名こんなのがいいかなぁ、って考えちぅ。





          19883   4





 柔らかな風が吹いている。花の香りのする岸辺で、ふたりの婦人が朗らかに談笑していた。
しかし時々、ふぅ、とため息をつく。
その度にひとりが上品なまゆ毛をふわ、と八の字にして微笑む。

「どうしたものかしらねぇ」
「まったく、しょうがない人達だよ」

そこに、白いロングドレスを着た婦人が近寄ってきた。

「まぁこれは先生じゃありませんか!いつこちらへ?」
「ご無沙汰でしたね。まぁいろいろ手続きがややこしくて。少し前には着いていたんですけどね」

「先生、ドレス、白になさったんですね。お似合いですわ」
「さすがにここで黒ずくめは…ってね。あら失礼、初めまして、ですわね」

「初めまして。真澄の母の文でございます。不肖の息子がお世話になりました」
「おほほほ、ご冗談を。まぁでもいろいろとありましたわ、速水さんには」
「本当に申し訳なくて…」
「あら、あなたがそんなふうに思う必要はないですよ」
「いえ、主人のこともありますし」
「そうね…あなたのご主人のことも。でも、ここに来てしまったらもうどうでもいいことでしょう」

「そうそう、そのことで文さんと悩んでいたところなんですよ、先生」
「どうしたのです」

「ウチのマヤと文さんとこの真澄さんがイイ仲になったのはいいんですけどね、
旦那さんが首を縦に振らないんですよ」

「イイ仲ね…」

「どうやらふたりはひとつ魂だったようなのです。真澄もマヤさんに救ってもらって良かったわ」
「それをまた旦那さんが引き裂こうかとなさるもんだから、あたしゃ腹が立って腹が立って…!」
「まあまあ、お春さん…落ち着いて…」
「あら、あんたの旦那さんだけど、あんただって大概辛い目に合わされてきたんだろう?
いっぺん、カツーーーーーーーンっってゲンコツ食らわしてやんなきゃ、何度も同じ過ち繰り替えすんだよ、
あのワカランチンのすっとこどっこいは!!」

「春さん、あなたそういうところ、マヤにそっくりなのね」
「あらっ!あらまぁあたしったら…ごめんなさいね、文さん~~。」
「ふふふ、いいのよ。本当のことですもの。
でもやっぱり、真澄の幸せのためにも、なんとかしてやりたい、と思うのですよ。
どう思われます?先生…」

千草はふたりをじっと見つめた。
聞くところによると、真澄もマヤも、14歳という多感な時期に、母を失っている。
マヤは自分の意思で母の元から飛び出しては来たが、
このふたりの母は子どもを14歳という幼さで手放さなければならなかったのだ。

二人とももう成人して自分の人生をしっかりと生きているが
母にとってはいつまでたっても…
例え自分が鬼籍に入っても、ここでこうして幸せを祈ってきたのだろう。
自分が薄幸だっただけに、子どもには幸せになって欲しいという思いが
人一倍強いのだろう。

「そうね…一度英介さんにはカツーーーーーーーーーーン、とゲンコツお見舞いしたいと
私も思っていたの。3人寄ればなんとやら。協力して、あの子達のために一肌脱ぎましょうか」

「ふふふ、なんだか面白そうね」
「あたしはあんまり関係なさそうだけど…お力添えさせてもらいますよ!」





深夜。
英介は一人うなされていた。夢をみていた。
尾崎一蓮が月光座で首吊りをしたという一報が入った朝の記憶。
四方八方から手を回して一蓮を追い詰めたが、まさか首をくくるとは思わなかった。

罪の意識に取り付かれたが、ひょっとするとこれで千草も自分を頼りにするのではないか、との淡い期待も沸きあがってきた。

今思うと、なんとも自分勝手な発想だった。
千草が自分を生涯許さなかったのも仕方がない、と思った。

葬儀にも参列できず…ただ、霊柩車を遠くから追いかけ、陰から空行く煙に想いを馳せるだけだった。

『速水英介』

誰かの声がする。

見ると、若い頃の美しい千草がたっていた。
息を呑んでいると、静かに話しかけてくる。

『こうして話をするのは…何年ぶりかしら。梅の里であなたが遭難した時ね』
「千草…千草なのか?わしは死ぬのか?まさか、お前が迎えに来てくれるとは…」
『あらやだわ、そんな役、わたしがするとお思い?』
『そうよあなた。わたしというものがありながら』

「う、わ、わ、あ、文!」
『いやね、浮気がばれましたって顔なさって。わたしは初めから承知の上だったでしょう?』

文はクスクスと笑っている。

「お前も来ているということは、やっぱりお迎えなのか?」
『いいえ。まだもう一仕事残っていますもの。それが終わってからよ』

文は優しく微笑んだ。

英介は思い出していた。控えめで常に微笑んでいた文を。
仕事で構ってやらなかったことに何一つ文句を言わず、優しく支えていてくれたことを。
千草が手に入らないのであれば、結婚生活などどうでもよかった。
しかし、文の柔らかな笑顔に、心が和んだ事は一度や二度ではなかった。

『今日来たのは…真澄さんのことよ』
「真澄?」
『あなた、真澄さんの人生をどうお思いなの?真澄さんの幸せ、と言うものを』

「真澄の、しあわせ…?」

『真澄は、あなたに育てていただいて、本当に素晴らしい成長をしましたわ。
あなたには感謝をしています。
でも、あの子の本当の幸せを、私は願っているのです』

『英介さん、真澄さんとマヤが愛し合っていることはもうご存知なのでしょう?』
『あのふたりは…ひとつ魂だったのよ。初めから結ばれる運命なの』

「む…」

『アンタがね』

横からひょこっ、と春が顔を出した。

『アンタが紫織とかいうお嬢と引き合わしたもんだから、話がややこしくなっちまったんだよ!』

『『春さん!!』』

『あなたが首を突っ込んで来ても話がややこしくなりますよ!』

「あ、あんたは誰なんだ!」

『あたしは北島マヤの母ですよっ!あんたあたしの娘の何が気に入らないってんですか!
ちゃんと紅天女だって継承して、大都芸能にだって復帰してやってんじゃないですかっ!
上演権は娘が持ったままですけどね、実際大都さんが取り仕切ってるのには違いないんだ!
アンタの思いどうりになって、それでなんの文句があるんですか!えっ?
それだけでなく、あんたの息子と結婚して、その上演権だって息子に託そうか、ってんだ!
なにが不満で認めないんですかね?えっ?


ブッッ!!

英介は噴きだした。興奮して噛み付くあたりは、あの北島マヤそっくりだ。

『ナッナッなにがおかしいんだいっ!!』

『春さん、そりゃおかしいわよ、あなたマヤさんとそっくりなんだもの』

『そしてあなたも。そんな春さんを見て噴出してしまうところなんか、真澄もそっくり』

『あなたもいつまでも意地を張ってないで…マヤさんのこと、かわいい、って思ってらっしゃるんでしょう?』

「なにを…」

『速水英介。わたしはあなたを生涯許さない、と思って生きてきたわ。
紅天女はあなたの一族に決して渡さない、とも。
けれど、ここに来てしまったら、もうどうでもいいことと思えるようになったの。
あとはあの二人にまかせようと。
ただ、ここであなたがあの二人を引き裂こうとするままなら…やっぱり困るわ。
いずれあなたがここに来た時に、思い出話に花を咲かせる、なんて気にはなれないかもね』

「千草…ワシを許してくれるのか?」

『そうね…これからのあなた次第、なんでしょうね。
 孫に囲まれた老後ってどういうものか…私たちに教えてくれるのもいいんじゃないかしら』

『『孫!!』』

『あぁ、あぁ、ぜひ、お願いしますよ!!孫ねぇ、あの子がお母さんになんてなれるのかしらねぇ』
『ほんと!真澄が肩車なんかして、孫がキャッキャ言って笑ってて、いくぞー、なんて走ったり!』
『あぁ、いいねぇ、ほんとうに素敵だよ…』

ふたりの母は涙ぐんでいた。そんな幸せな風景を、思い浮かべるだけでも良かった。

「たしかに…あの病弱なお嬢さんでは望めなかったかもしれんな…」

千草が、天女の微笑を向けてくれた。
英介は自分だけに向けられた微笑をみて、涙があふれた。


『あなた。ふたりをみとどけてやってくださいね』

文が肩を抱いてくれて、頬にそっと口づけをして離れて行った。







目覚めた時、涙で濡れていた。

朝倉と庭で話す。

「そろそろ潮時なのかもしれんな」
「なにの、でございますか、御前」
「真澄の、だ」

「どうだ、やつは」
「一時は憔悴なさって一同心配しておりましたが…
紫織様がご結婚なさってからはおだやかになられました。
最近は朗らかになられましたな。速水家に入られる前のような」
「北島マヤの影響か…」

「北島マヤはどうだ」
「それは御前のほうがよく御存知でしょう」
そう言われて、英介は咳払いをする。

「いつぞや…若が血相を変えて病気の彼女を屋敷に運び込んだことがありましたな。
その時はまぁなんとじゃじゃ馬な娘かと思ったものですが…
今思えば、その時から既に若は彼女のことを愛しておられたのでしょう…
最近よくお見えになりますが、朗らかで笑顔を絶やさないかわいい娘さんに成長されましたな」

「その…なんだ。速水家の嫁としては、だ」

「もうよいのではないでしょうか、御前」

「朝倉?」

「若が幸せそうにされていれば、それで。
それだけで十分なのですよ、おそらく…」

「お前も歳をとったということだな、朝倉」
「お互い様です、御前」

庭に穏やかな笑い声が響いた。
爽やかな風にのって、木の葉が笑ったように揺れた。







              つづく。





爺サンズ & カーサンズハイパー 、でした!
またまたスピリチュアルな話になってしまって。スマソ。

まだもう少し続きます…






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2011-09-20 Tue 02:42 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-09-20 Tue 23:52 | | #[ 内容変更]
Re: Cor-○○○○○様☆
本当に、いつもありがとうございます!
いいですねぇ~~~!!つい、
きゃわいいっ!きゃわいいっ!!っと萌え全開しました~!
ワタシは甲子園生まれなので…どうしましょうかねぇ~~^^
決まるまでには書き上げたいな、と…!
素敵なお題、ありがとうございました~~♪
2011-09-21 Wed 02:05 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
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