きょうだい喧嘩 大都芸能株式会社。カリスマ社長が今一押しの女優を伴って歩いてくる。
いや、伴って、というのは多少語弊がありそうな。
のしのし歩く側を小型犬のようなちっちゃいのがわちゃわちゃ、ころころしながらこちらに向かってくる。
「……だからな、おれだってちびっこ草野球ではエースで5番の豪腕でその名を轟かせていたんだ。
プロやメジャーだって視野にいれるくらいの」
「それっていつの話ですか」
「ん?小2までだ」
「大昔じゃないですか」
「酷い言い方をするな、君は」
「だってそれ、あたしが生まれる前のことでしょ。十分大昔です」
「そっか、じゃ、おれが小学校卒業する頃、君はまだオムツでお尻に青いモウコハンがあったってことか」
「なんなんですかそれっ!セクハラ発言!」
「オムツにモウコハンはセクハラか?君も良く考えて物を言ったほうがいいぞ」
「あーーーもーーーーワケわっかんないっ!なんで野球の話がモウコハンの話になるんですかっ!」
「君が大昔なんておれが傷つくような事を言うからだろう!」
「へへぇ~~~~ん、まさかぁ~~!速水さんがそんな『デリケート』な神経だとは思えませんけどね!
どっちかってと、『バリケード』じゃないんですか~?」
「おれはな、君が言うことには何でも過敏に反応するように出来てるんだ。
これ以上いじめるとパワハラになるぞ!」
「パワハラってのは立場が上の人が下の人に対するものでしょっ!あきらかに逆じゃないですか!
パワハラじゃなくて下克上ですっ!」
「げっ、下克上って君、ぶははははははは!それも言うならだな、」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっもぉぉぉぉぉぉっ野球の話がなんっで下克上の話になるんですかぁっ!!!!」
「下克上を持ち出してきたのは君じゃないか」
「だ・か・ら・もーーーーーいいじゃないですかってそんなこと!」
「よかぁないぞ、そもそも下克上っていうのはな…」
「もーーーーそんな速水さんってダイッキライ!」
「おいっ!それ本気で言うのかっ!」
「ただのノリですっ!冗談に決まってるでしょっ!!」
「ん、それでいい」
「もうっ、なんなんですか余裕こいた君な態度~~~!おぼえてらっしゃいっ!」
・・・
・・・
・・・
会社のロビーを大音響で騒ぎつつ横切り、社長室階まで直行のエレベータに乗って行ってしまった。
それを見ていた社員連中は呆れかえる。
「しかしどうしてまた、あんな犬猿の仲なのに、北島マヤは大都に復帰したんだ?」
「だよなぁ、紅天女の看板を引っさげて帰ってきたから、社長もホクホクだとは思うが、
しょっちゅうああして喧嘩しながら歩いてるもんな」
「さすがに速水社長でも手に焼くんだから…先行き不安だよな」
「おれはそうは思わないな~」
「なんだよ」
「おれさぁ、あのふたりのやりとり見てたら姉貴のこと思い出しちまった」
「なんで」
「姉貴とは小さな頃から喧嘩ばっかでさ。お互いの揚げ足取りしてふざけあって」
「今でも時々ぶつかるけどさ、芯のとこでは結構姉貴が好きだったりする」
「あのふたり、犬猿の仲っていうより…きょうだいみたいに仲が良いのかもしれないぜ~」
「へぇ」
「そんなもんなのかね~」
当たらずも遠からず、ね…
噂のふたりから随分離れて付いて来ていた水城秘書がひとりごちた。
確かに、一人っ子どうしのふたりが、そんな喧嘩をするのは仲がいい証拠なのかもしれないわね。
ただね、本当はもっともっと、仲がいいのよ。
秘書の私が、同じエレベータに乗らないのも、
ふたりが入った社長室に20分は遠慮して入れないのも、
犬猿の仲じゃなくて、きょうだい以上に、仲が良すぎるからなのよ。
ふたりの仲が知れないように、わざときょうだい喧嘩をしているのかもしれないわ。
「はあああああああああ~~~~」見てられない、やってられない。
時々本気で下克上してやろうか、と思う水城なのであった……
おしまい!!
いかがでしたか?わ○こ様~~~?
喧嘩のシーンが読みにくくてすみません~~~~!!!
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