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片翼の天使 13
2012-03-26 Mon 02:13
今宵も

 はね吉の がらすの森
         ~こちらも連載再開でございます~

  …にお越し下さいまして、ありがとうございます!

先日の言い訳に拍手いただいてしまって、すみません~~
がんばれよ、と肩ポンしていただいたようで嬉しかったデス


なかなか暖かくなりませんね~~~
我が家の梅もやっと花開きました。



では、続きからドゾ!!









                 片翼の天使 13



 タラップの最後の一段を降りたと同時に、堪えていた涙が零れ落ちた。
ぽろぽろと落ちる涙は、苦い味がする。

マヤはターミナルには戻らず、波止場のベンチで涙を止められずにいた。
小切手を返す話に、真澄が怒りを露わにしていたのは、
忙しい時間を縫ってのせっかくのデートの時間を、そんな話題で台無しにしたことへの怒りだと思っていた。
あの二人の仲にどうしても割って入ってしまう。
それは自分の無意識がそうさせてしまうのだろうか…
二人の結婚を祝えない心が、無意識にそうさせてしまうのだろうか…

あの、真澄が…
あの柔らかそうなベッドで愛を囁くのか?
どんな声で?どんな言葉で?
身が引き裂かれそうに痛い。
愛する男に抱かれるという喜びを知らないマヤだが、
愛する男が他の女を抱くのか、という心の痛みに耐えられずにいた。

二人を乗せた船は、港を出て行く。
あの後、機嫌を悪くした真澄はどうしただろう…?
何も無かったように、楽しい時間を過ごしていて欲しい…欲しくない。



「悪かったな、ちびちゃん。そんなに悔しい思いをさせたのか」

頭の上から、静かな声が落ちてきた。同時に、くしゃ、と頭を撫でられる。

「は、速水さん!!どうして?船、出ちゃってるのになんでここにいるの?!」

真澄は苦笑いをしながら口元に手を当てる。
「ああ…会社に呼び戻された。泊まりなんてとんでもない、とね」
「可哀想に…紫織さん…」
どこかホッとしながら、嬉しそうに恥らっていた紫織の落胆に、本心から気の毒に思っていた。

「それより、指輪の件…君を疑って本当にすまなかった。
 君はそんな事をする子じゃないとかばってやるべきだった」
「紫織さんのこと、守らなきゃ、って思ったんでしょう…?
 大丈夫です、誤解が解けたなら、それで十分なんです、あたし」

マヤは目を真っ赤にしたままで、てへへ、と笑った。

「ちびちゃん…」

「じゃ、あたし帰ります!稽古場に戻らなきゃ」
「おれも社に戻るから、送って行こう」
「いーです!急ぐんでしょ?」
「夕食付きだぞ」
「仕事でデートキャンセルになった人がなに言ってんですか」
「美味いハンバーグでも食いたい気分じゃないか?」
「うぐ…」

真澄は楽しくなってきた。さっきまでの鬱陶しい気分を晴らしたい。

「鶴も亀も恩返しに機織りしたり竜宮城に連れて行ったりするんだぞ。
 暴漢から守ってやった恩返しを要求するどころかメシを奢ってやるとまで言ってるんだ。
 つきあえ!」
「もうっ、速水さんの強引!横暴!暴力反対!!」
「…何が暴力反対だ。行くぞ!」

真澄の大きな掌が、マヤの頭をくしゃくしゃ、とした。
マヤが頬を膨らませて見上げると、真澄の手はそのまま、マヤの肩を抱いて歩き出した。

マヤの頬は膨らんだまま…真澄の掌の温かさに胸がときめいた。
さっきまでの胸の痛みが、少しづつ和らいでいる。
肩を抱かれたまま歩いていることで、甘い喜びに痺れてきそうだ。

「もぅ…こうなったら…お腹いっぱいご馳走してもらいますから…」
「ああ。ケーキだってデザートだって思い存分。動けなくなるほど食べたっていいぞ」
「笑いすぎです、速水さん!!」

口ではわざと乱暴に喋ってしまう。自分がときめいているのを、気付かれないように。
…お願い…そのまま、ずっと肩を抱いていて…。






二人の間に出来た溝を埋めたい、その一心だった。
お互いに、誤解しあっていた、そう感じた。
今までどうり、軽口の叩き合いをして
お互いが前と変わらないことを確認していた。

本当の。見せない心だけはひた隠しにしながら。

確かめたいことは、山のようにある。
けれど、その話題になれば
触れてはいけないところにも言及しなければならない…。

核心を外して、二人はよく喋り、よく食べ、よく笑った。
こんな関係がずっと続けばいい…
ふたりの立場が変わっても、永遠に変わらない関係…
それで、いい…





店を出て、二人並んで歩いていた。
名残惜しい。相手のぬくもりを、この身体に感じたいけれど。
互いに触れない距離で、並んで歩く。

「もうここで…黒沼先生にも報告しなきゃ」
「ちびちゃん…」

「ごちそうさまでした。なんか…すごく楽しかったです…ありがとうございました!じゃ!」

くる、と背中を向けて歩き出した。

「あの日」

真澄はマヤの背中に向けて語りかける。マヤの足が止まる。

「気を失っている時、夢を見たんだ…
 阿古夜が、おれの介抱をしてくれた。おれの顔に涙が降りかかって…
 阿古夜はくちづけでその涙を吸い取ってくれた。
 愛の言葉を囁きながら…。
 幸せだった…あんな幸せな夢を、おれは今まで見たことは無かった」

「あれは…」

言葉を遮って、マヤが背中をむけたまま笑う。

「うふふふ、速水さんでもロマンチックな夢、見るんですねっ!すっごい意外~~~!!」

「…そうかな」

「そうですよ――――!もう、暴漢に襲われるようなムチャはしないで下さいよ!!
 紫織さんに心配かけちゃダメですってば!あ、あたしもちょっとは心配してあげますけど!」

くる、と振り返ってこれ以上にない笑顔で真澄に語りかける…

「じゃ、帰ります!今日はご馳走様でした!あたし、速水さんが夢に見たくらいにステキな阿古夜になります!
あたしを…見てて下さいね!」

ぴょこん、とお辞儀をして、走り出した。



…伝わっていた…あたしの想い。
喜んでいてくれた!夢でも、幻でもいい…速水さんが幸せな気持ちになったって言ってくれた!!
あたしは…それ以上は望まない。
それで、いい…
あたしは………しあわせ……!!


しあわせなのに…

なみだが、ぽろぽろと風に乗って散っていった。







       つづく!





 はぁ…切ないねぇ…

えと、ここでやっと「承」の部分が終了です^^
いやぁ…長くなったなぁ。

ここからは転がるように完結に向かう…はず。
えええええええええええええええええええええ?





それでは今宵はこのへんで。
年度末、どうぞお身体に気をつけて…

明日もいい日でありますように☆










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この記事のコメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-03-26 Mon 20:47 | | #[ 内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-03-26 Mon 23:27 | | #[ 内容変更]
Re: ああああ64…
か、数えたのか… 爆
ありがとうございます、ホントにありがとです!!
13の健気マヤたんに共感して涙してくださったなんて~~~!!
「しょうわなオンナ」の萌えドコロ、ですよ?OK?
最近の男女交際って…案外簡単についたり離れたりするな~と寂しい気持ちのワタシです。
そこんところ、想いはあっても簡単にくっつかないぜ?な運びです。
♪ドラマティックしたぁいよぉ~~~♪なんて歌がありましたな。
まさにソレ!!
えっちらおっちら、がんばって書きましゅ!!
コメントありがとでした☆
2012-03-31 Sat 00:01 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
Re: 返信不要です
ありがとございます!!
転がるようにハッピーエンド!!なんて魅惑的な言葉!!
ソレ本編に希望!!!!!
ガラパロの副作用、寝不足、あるいはその他のことが一切おろそかになる…
そう、一切。一切です!!
なんとかせねば。いつもそう思っている。なのにいつもふらふらとPCを立ち上げてしまうのよ…
中毒、とか依存症、とかですね。
これって治療法無いですよね。伝染するし。コワイビョーキ、みたいじゃまいか!!

L○様もすっかり沼の住民になってしまわれたのですよね~~ううううご愁傷さまですぅ
でも、すンごくありがたいメッセいっぱいいただけて、
ワシらは癒されてますよぅ~~~!
あじがとございましゅっ!!

我が家、3人中2人風邪でダウンしてました。あんな風にワシも倒れたいぞ!!
どうぞご自愛くださいね♪
2012-03-31 Sat 00:10 | URL | はね吉 #-[ 内容変更]
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