線香花火 ユニオン・クロゼットのCMは世間を騒がせるほどの人気を博し、続編を制作することになった。
今回も速水社長は当日まで蚊帳の外、秘密裡に計画が進められる。
なんでも、女性週刊誌に「あの北島マヤの相手はダレ?」特集が組まれるほどの人気である。
身長は187cm?細身だがしなやかな筋肉質。年齢は27~8歳か。適当に想像でまことしやかに。
マヤの舞台の制作発表にまで芸能リポーターが「相手モデル」についての質問を浴びせるほどで
その場に事務所社長としていながら本人としては痛し痒しの状況だった。
マヤはニヤニヤしながら「そーですねぇ、一般の方で普段は会社員をしているそうですよ」だの
「普段変装してるのかもしれませんねぇ」だの、こちらがヒヤヒヤするような発言をする。
社長として、芸能リポーターに「関係ない質問するな!!」の睨み、
マヤに「面白がってヘンなこと言うなよ!!」の睨みを効かせて、その場の空気を凍りつかせた。
そうすると「モデル界にスーパーマン?クラーク・ケントばりの変装の一般会社員?」とまたもや騒がれる。
「でも」
マヤが面白がって言う。
「こんなにいつもそばにいるのに、案外速水さんだってばれないもんなんですね。
それか、速水さんに芸能人オーラのON とOFFを使い分ける能力が備わってるか」
「おれにこれ以上仕事を増やさないでくれ」
「正体がばれても、おれはマヤと共演じゃなきゃ、モデルの仕事なんてしないからな」
「うふ」
マヤがぴと、と腕にはりついた。
「すごい殺し文句!あたしと独占契約?ステキ!!」
…なんだかいつもこのパターンでほだされてしまっている自分が情けない…
「今回は浴衣のCMです。日本の伝統衣装ですからね。紅天女の北島さんに持って来いの企画です」
「で、また私も後ろ姿で出演なんですか」
「モチのロンですよ社長。もう抜きにしては語れないところまで来ています。
そうでなかったら全国からブーイングです。」
「この速水真澄をこき使う広告代理店なんて君のところぐらいだ。いつか干してやる」
「ご冗談を。マヤさんからけっこう楽しんでいただいてるようだ、って伺ってますよ」
「それから今回はナレーションもお願いします。ついでに後姿でなくて口から下、です。」
はぁ?! いつの間に!!・・・・どいつもこいつも。
スタイリストが、甚平と浴衣と選べますよ!だの団扇どの柄にしましょう?だのはしゃいでいる。
ヘアメイクが、夏の設定なので少し濃い目のドーラン塗りますね~あ、胸元までいいですか?と顔を赤らめる。
それから「下着…ちょっとカタチが出るといけないので…トランクスにされます?」だと?!
ああ、もう、どうにでもしてくれぃ!!
ユニオン・クロゼット浴衣CM.
『たのしい夏』 (マヤナレーション)…白地に紅い金魚柄の少女、狐の面をつけて振り返り、パッと取るとキツネ顔。すぐにはじける笑顔。
背景は縁日の風車。
…ピンク地に紫の蝶と赤い撫子柄。5連のピロピロ笛を力一杯吹く。
背景は射的。
…水色地に桃色の朝顔柄。綿飴にかじりついて引っぱる少女。
背景はたこ焼きの屋台。
『恋する季節』…紺地に流水紋、桜の花びら。
線香花火を手に、うっとりと見つめる横顔。ほの暗い灯り。彼の目線で見ている。
場面は切り替わる。
ふたり並んでしゃがみ、線香花火をする。奥に彼の姿。紺の糸目小紋。逞しい胸元がのぞく。
「落ちちゃうから。そーっと、そっとね。」とつぶやく少女。
『もうとっくにおちてる』 (真澄ナレーション)
「えっ?」少女が彼を見る。
すかさず、首を傾けてキスをする彼。
ポトリと火玉が落ちる。ジュッ、のアップ。
『恋に。』遠くからキスをしたままの二人。
「浴衣、はじめました」
ユニオン・クロゼットロゴ。
ロゴが消えると唇を離す。
すかさず、少女の
「もう、えっち」肩で小突く。
バランスを崩す彼。
撮影が終わって、真澄はひとりごちた。
「結局しゃがんでるだけだからカタチがどうこうとか関係なかったじゃないか。」
おしまい。
いかがでしたでしょうか?ああ、これがワタシの精一杯です、紫苑様っ!!
スチール広告まではイメージが間に合いませんでした…。
本気でシャチョーの副業化を考えてしまいそうです。「
MASUMI」って名前で。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました♪
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